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ショウヤ個展(3)
「じゃあ明日から、よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします、お疲れ様でした」
スタジオスタッフに見送られて、ショウヤとハルトは、会場を後にした。
「よし、じゃあ前夜祭飲み…いくか」
「そうしましょう!」
そして2人は、会場近くの居酒屋に入った。
生ビールとレモンサワーで乾杯してから、ショウヤはトキドルのメンバーに、明日からの個展開催のお知らせを送った。
「カオルは、光鬱のレコーディングやってんだよね?」
「そう言ってましたね…いつだろ…もう終わったかもしれませんけど…」
「観に来れるかな」
「来るっては言ってくれてましたけどね…どうだろうな…」
「素面だと恥ずかしがり屋だからな…あんなに自分の写真が並んでるの見たら、どうなんだろ…」
「怒りますかねー?」
「あはははっ…かもしれないよな」
僕やサエゾウがいないので、ホントに最低限のつまみを注文しての…彼らは飲みながら、明日からの事について語り合っていった。
「お客さん、いっぱい来るといいな」
「んーまあ、ホントは…本当に、そんなに来なくていいと思ってたんですけどね」
「そっか…自分が浸りたいだけだって…言ってたよな」
「はい…でも…」
ショウヤは、レモンサワーをゴクンと飲み干すと…ポーッとした表情で続けた。
「例えば…スタジオを利用してくれた、トキドルを知らないお客さんが、ついでに寄ってくれて…それをきっかけに…ファンになってくれたらいいなって…今は思ってます」
「なるほどね…」
ハルトは微笑みながら…ショウヤの頭を撫でた。
「そう…なるといいな」
「…はい」
ショウヤは、思わず顔を赤くした。
おかわりレモンサワーを飲みながら…ショウヤはまた、少しうっとりしたような表情で言った。
「ハルトさんのファンも増えちゃうかもしれないな…」
「えっ…何で?」
「だって…あのトキドル人形…あれは、あれだけでファンが付いてもおかしくないと思います!」
「100均クオリティーなのに?」
「1000円…いや、5000円で売れますよ!」
「そんなハズ無いだろ」
「僕が買います!!」
「あはははっ…」
目を爛々と輝かせながら、前のめり気味に声を上げるショウヤを見て…ハルトは、笑いながら言った。
「個展終わったら…好きなだけ持ってっていいよ」
「ええーっ…もったいない」
「だって欲しいんでしょ?」
「ううーん…そうなんですけど…でも、もしかしたら、ちゃんとお金払ってでも欲しいって人が現れるかもしれないじゃないですか…」
「そーれは、どうかなー」
ショウヤは、本気で悩みながら続けた。
「そうだ、明日までに…一応、値札を書いて添えておくことにします」
「あー…そしたら、ショウヤのPopクオリティー効果で、売れちゃうかもしらんな」
「…でも、変な人には売りませんよ」
言いながらショウヤは、レモンサワーのジョッキを、テーブルにガタンと置いた。
「ちゃんと、大事にしてくれる人にしか…渡しません」
「ふふっ…そんなの分かるのか?」
「勿論です、僕を誰だと思ってるんですか?」
(あ、酔っ払ってきたな…)
「そうだったな」
ハルトは、ふふっと笑いながら続けた。
「じゃあ、やっぱり…売れ残ったヤツは、全部お前にやる事にするわ」
「…」
「お前だったら…大事にしてくれるんだろ?」
「…」
「あ、オカズにする大事か」
「もうー!」
「あはははっ…」
「ま、それも無きにしも非ずですなんですけど…」
また顔を真っ赤にしながら…ショウヤは続けた。
「ハルトさんが、トキドルメンバーへの愛を込めて作った子たちじゃないですか…」
「…」
「それって…ものすごく価値があると思うんです」
「愛は、ちょっと大袈裟じゃないか?」
「いいえ!」
酔っ払いショウヤは、更に身を乗り出して、目を大きく見開いて、キッパリと言い切った。
「僕には視えました!…あの子たちの背中に…ハルトさんの愛と魂が…」
「わ、わかった…そんなに言ってくれて…ありがとう」
ハルトは若干引き気味で…そして若干メンドクサそうに言った。
「明日も早いし…そろそろ出ようか」
「…あ、はい」
まだまだ語り足りない様子なショウヤは、少し残念そうな表情で、残ったレモンサワーを飲み干した。
会計を済ませて、彼らは店を出た。
夜道をプラプラと歩いて…ほどなく、それぞれの家に向かう分かれポイントに差し掛かった。
「じゃあ…明日から頑張って」
「…」
そう言ったハルトを…ショウヤは黙ってジッと見つめた。
「…」
ハルトは、ハッとして…彼から目を背けた。
それを見たショウヤは…ニヤッと笑った。
「行きましょう…」
「…っ…だって、お前、明日早いんじゃないのか?」
「ハルトさんちから行くんで間に合います」
「…そうか」
そして2人は、
ハルトの家に向かって、並んで歩き出した。
要は…ハルトのお持ち帰ってヤリたいあれを、
ショウヤに読まれてしまったわけだな
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