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夢のような空間(2)
「ショウヤお疲れ」
「見に来たよー」
個展も、ちょうど中盤に差し掛かった週末の、閉店も間近な時間に…カイとサエゾウが、会場を訪れた。
「ああーありがとうございます」
「すっごいなー」
「思ってたより本格的だな…」
会場を見回しながら、彼らは呟いた。
「ショウヤって、ホントにカメラマンなんだねー」
「そうですよっ!」
「いやマジで…大したもんだな…」
カイは、飾られた写真を、ひとつひとつ見ながら続けた。
「被写体が自分ってのが…ちょっと引っかかるかどな」
「えーカッコいいじゃんー」
サエゾウは、目を輝かせながら続けた。
「カイもカッコいいけど、やっぱ俺めっちゃカッコいいよねー」
「…まー否定はしないさ」
そしてサエゾウが叫んだ。
「この人形!どしたのー!!?」
「あーそれは…ハルトさんが作ってくれました」
「めっちゃ可愛いー!!」
2人は、その人形を…マジマジと見つめた。
「うわー衣装の再現度が、半端無いな…」
「ハルトってすごいんだねー」
そしてサエゾウが、宵待ちコーナーの人形を見て言った。
「このカオル人形欲しいー」
「えっ…それは売約済です」
「えーマジでー?」
「はい…既に、ふ…いや3人が希望出してるので、抽選になります」
あの後、もうひとり希望者が出たので…ショウヤご本人と合わせて3人って事らしい。
「俺も抽選に入れてー」
「…」
そんな事したら、当選確率が下がっちゃうじゃないか!
ショウヤは、力強くそう思ったに違いなかった。
ほどなく…ハルトもやってきた。
「お疲れ様…調子はどんな感じ?」
「おかげさまで…ボチボチです」
「スタジオのお客さん来てくれた?」
「はい、いっぱい来てくれてます…反応もいいです」
「そっか…それはよかった」
言いながらハルトは、ショウヤの肩に手を置いた。
「カオルとシルクは来てないのー?」
「あーまだ来てないですね…」
「呼んでみるか」
「そうしようー」
サエゾウは早速、トキドルLINEに書き込んだ。
カオルとシルくんもショウヤ個展おいでよー
カイとハルトもいるよー
飲み行こうー
「結局飲みたいんか」
「あはははっ…」
そして彼らは、会場の写真を見廻りながら…
僕とシルクからの返事を待った。
出張中
ほどなくシルクからの返事が書き込まれた。
「あーそうなんだ…残念ー」
「カオルさんは?」
「まだ既読が付かないな…」
「何かの最中なのかな」
「アヤメとヤってる最中とかー?」
「…」
「そんなん許さないー!」
自分で言っといて…自分で突っ込むサエゾウだった…
いつまで経っても既読が付かないので、致し方なく彼らは会場を出る事にした。
「ま、返信が来たら…飲みに来いって言ったらいい」
「そうですね」
そして彼らは、近くの居酒屋に入った。
「いやもう…ホントに、僕は、あのままあの場所で死にたいです」
あっという間に酔い進んだショウヤは…いつものように、メンドクサく、熱く語り始めていた。
「だから、死にたいとか言うんじゃないよって」
ハルトがショウヤの頭を小突いた。
「だって…そのくらい幸せなんですよ」
ショウヤは、ポーッとしながら続けた。
「1日中ずっと、大好きなトキドルの写真に囲まれてるんですよ」
「自分が撮ったんだから、いつでも見れんじゃんー」
「PCじゃあ、小さい画面で1枚ずつしか見れないじゃないですか」
「…」
「実物よりも大きな写真が…しかも何枚も何枚も…ずっと僕を見つめてくれてるんですよ…」
「実物も、今ショウヤを見つめてるけどねー」
「あーもうー…それとこれとは、また違うんです!」
だいぶ酔っ払った感じのショウヤは、更に加熱していった。
「あとね…トキドル愛に溢れた子たちが…来てくれるんですよ…」
「あー、それは嬉しいね」
「嬉しいなんてもんじゃ無いんです!」
「彼女たち…すっごいマニアックなんですよ!…えっそんな所にも気付いてくれてんの?…みたいな話を、してるわけですよ」
「例えばどんな?」
「神様のPVに、メンバー以外が出てるってのを気付いてる子がいました」
「へえー、すごいな」
「…それに」
ショウヤは、若干ウルウルしながら続けた。
「僕とハルトさんが…いつもLIVEに一緒にいるって事も、知っててくれました…」
「…」
「そうか…それは…嬉しいな…」
ハルトも、感慨深い表情になった。
「大事に…してあげてくださいね…彼女たちの事…」
「ああ…もちろん」
「めっちゃ大事にするー」
カイとサエゾウも、嬉しそうに笑った。
ショウヤは、目を擦りながら続けた。
「やっぱり…あのカオル人形…あの子たちに譲ろうかな…」
「そりゃそうだ…」
「絶対譲るべきだよ」
「俺も我慢するー」
「…でもなあ…」
決心がつかない様子のショウヤに向かって、ハルトがバシッと言った。
「だいたいお前は…本物のカオルと、何度もヤリ散らかしてんだろ?」
「…」
「しかもあんな…ドSスイッチ全開で!!!」
「……」
「えーどんなスイッチなのそれー?」
サエゾウが目をキラキラさせながら言った。
「悪いけど、サエよりタチ悪いからね」
「マジでー?」
「…わかりました…譲ります」
ショウヤはシュンとして、下を向いてしまった。
「それにしても…カオルの既読、遅いな」
「ホントに最中なんじゃないの?」
「来週キッチリお仕置きしてやるー」
「あはははっ…そうだな」
その頃…
僕はまさに最中だったのだ…
彼らの全く知らないところで。
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