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高額なバイト(2)

「そろそろお客さん来るから、照明落とすね」 「…?…はい」 最初、僕はマナミの言ってる意味が、よく分からなかった。 彼が、部屋の隅にある照明のスイッチをいじると…そのリビングの照明が、一気に暗くなった。 ふと広い窓を見ると…素晴らしい夜景が広がっていた。 「うわあー…綺麗ですねー!」 僕は思わず窓に駆け寄った。 ほどなく、BGMも流された。 ムーディーな感じのジャズだった。 仄かな灯りと、外の夜景に照らされて…その部屋は、まるで高級クラブのような雰囲気を醸し出す空間と化した。 ま、本物の高級クラブに…行った事は無いんだけど 「おかわりする?」 僕のグラスが空になったのを見て、マナミが言った。 「あ、はい…いただきます」 おかわりのハイボールを出しながら、彼が言った。 「今日はいっぱい稼いでってね…」 「えっ…あんなに頂いたのに?」 「あれはあくまで基本料だから…」 「…?」 「カオル次第で、いくらでも増やせるよ…」 「…」 「今日は、金を使いたくてしょうがないお客さんばっかり来るらね」 ピンポーン その時、チャイムが鳴った。 「とりあえず座ってゆっくりしてて…」 そう言い残して、マナミは玄関の方へ行ってしまった。 僕次第って… それは一体、どういう意味なんだろうな… もしかして…やっぱり脱がされたりするんだろうか ほどなく、マナミと一緒に…割と中年の男性が2人、入ってきた。 「こんばんわ」 「お、彼が今日のモデルさん?」 「そうでーす、お手柔らかにお願いしますね」 僕は、彼らに向かって、ペコッと頭を下げた。 ピンポーン 彼らが、出された飲み物で乾杯していると、再びチャイムが鳴った。 そんな感じで…最終的に、5人のお客さんが来た。 最初の2人は、40〜50歳くらいに見えるが…他の3人は、もう少し若いだろうか…それでも30〜40歳くらいか。 どの人も、小綺麗な様相で…素人目にも、セレブな匂いがプンプンしていた。 お金を使いたくてしょうがないお客さん… って言ってたよな… 皆、お金持ちなんだろうな… 「そろそろ始めるけど…カオル大丈夫?」 「あ、はい…」 広いリビングの…ランダムに置かれたソファーに、彼らが散らばって座っていた。 その中央の低いテーブルの上に、僕は立たされた。 レンが、皆に僕を紹介した。 「今日初めての…カオルくんです…ビジュアル系バンドのボーカルをやってるんですよ」 「へえーバンドマンなんだ」 「ビジュアル系ね…」 「ほんまに…めっちゃ可愛いな」 あ、関西弁の人もいるんだ… 「どうぞ、お好きなように…ポーズの注文出してくださいね」 「じゃあとりあえず…そんな感じで立ったまま、片手を少し上げてもらおうかな」 言われて僕は、そのように…片手を少し上げた。 皆、自分のスケッチブックを取り出して…サラサラと描き進めていった。 もちろん、酒を飲みながら… もちろんマナミも…僕を描いていた。 ただ彼は、描きながらも…他のお客さんのグラスが空くのを見つけては、甲斐甲斐しく、おかわりを作って運んでいた。 それからも、何度かポーズを変えながら…しばらくは、いつもの感じでスケッチ大会が進んでいった。 「じゃあ…ちょっと休憩にしようか」 マナミに手を引かれて…僕はテーブルから下りた。 「ふうー」 「ふふっ…疲れた?」 「いえ…まだ大丈夫です」 「一服してて…あと…おかわりも作っておくね」 「はい…ありがとうございます」 僕は、カウンターの灰皿のある場所に行って、煙草に火を付けた。 「ふぅー」 「はい、おかわりどうぞ」 マナミが、僕にグラスを渡した。 「今度違うウイスキーにしたから」 「そうですか…」 特に拘りはなかった。 ひと口飲んだそれは…たしかにさっきまでのとは、少し味が違った。 「さてと…そろそろ再開しようか」 「あ、はい」 僕はまた、テーブルの上に上った。 「今度は座ってくれる?」 「はい…」 僕はテーブルの上に、正座をした。 「少し足を崩して、斜めになってもらえるかな」 「…」 僕は、そのようにしてみた。 「うん…いいね」 「少し襟元…開けてもらってもいい?」 あ、来たな… やっぱり、そういう注文されちゃうんだ… 思いながらも…僕は例の茶封筒の中身を思い出して…素直にそれに従った。 「裾も…少し捲れる?」 僕は致し方なく…浴衣の裾を、自分の足が少し見えるくらいまでめくった。    と、そのとき… 僕は、何とも言えない、変な気分になった。 「…っ」 …何だろう?? 急に、僕の胸に…寒気のようなものが走り抜けた。 それはまるで…シルクに背中から抱きしめられたときのような感覚だった。 そして…目の前が陽炎のように揺らめいたかと思うと…僕に向けられた視線が、急に身体に突き刺さってきた。 胸の寒気と相まって…僕はまるで…仰向けになって、トキドルの3人に見下ろされているときのような…嗜虐的な感覚に襲われた。 「…っ…?」 はだけた胸元の…露わにさえなっていない筈の乳首が…触られてもいないのに…勝手に硬くなっていってしまった。 そして、少し捲った浴衣の裾が、足に触れる刺激が…そのままジワジワと、下半身を蠢き湧き上がり…それは、着実に僕の股間へと、到達しようとしていた。 身体が…どんどん熱を帯びていった。 「…ん…はぁ…あっ…」 息は上がり… ほどなく僕は、居ても立ってもいられなくなった。 何で? どうなっちゃってるの…? 「違うウイスキーの効果、出てきたみたいだね」 言いながらマナミが、僕の肩をスッと撫でた。 「はああっ…」 僕は思わず、ビクビクッと震えてしまった。 「いっぱい…稼いでね」

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