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楽しい地元のイベント再び(1)
「今日もよろしくお願いします!」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
例の強面のマスターとの、妙に礼儀正しい挨拶から…
またも、地元イベントの1日が始まった。
今日もまた、バラエティーに富んだ出演者陣が集まっていての、若干のアウェイ感は否めなかったが…
頭の傷も、順調に良くなっていた。
まだ抜糸は済んでいなかったが、歌う分には何の支障も無かった。
滞りなくリハも終えて…
僕らは色々と買い込んでの、準備のために、また僕の家に集まっていた。
「はい、とりあえず乾杯ー」
「今日も頑張ってくださいね!」
「にゃー」
それぞれが自分の缶を開けて…飲みながらの準備が始まった。
「あの…ハルトさん」
「ん、何?」
「今日もヅラですよね?」
「そのつもりだけど?…紙パンツもね」
「…っ」
「カオル、こないだ頭ケガしちゃったんだよー」
「ええっ…そうなの!?」
「ホントですか!?」
「…はい」
「どこどこ?」
言いながらハルトは、僕の後頭部の髪を掻き分けた。
ショウヤも、その手元を覗き込んだ。
「…この辺です」
僕は、自分でその辺りを触った。
「ああーホントだ…」
「うわあ…しかもまだ留まってるじゃないですか!」
「ヅラかぶったら…痛い?」
「あ、いえ…そうじゃなくて…その周りだけ、治療のときに髪を切られちゃったんで…是非ヅラにして欲しいと思ってたんです」
「…でも、あんまり良くは無いよね」
「確かにな…汗かいたりもするだろうし」
「むしろ、ヅラじゃない方が良いんじゃない?」
「そうだな…」
ハルトは、ううーん…と、考え込んでしまった。
そんなつもりは無かったんだけどな…
「予定変更しよう、地毛でいこう」
「ええーっ?」
ハルトは、自分の大荷物の中をゴソゴソと漁って…とりあえずヘアアイロンを取り出すと…マジマジと僕の頭を見た。
「どうするかな…」
「…」
眉間に皺を寄せて、うーんと唸りながらも…ハルトの目は、爛々と輝いていた。
「とりあえず後回しだな…先に着替えだけしといてくれる?…パンツもね」
そう言ってハルトは、ふんわりとしたゴシック調のワンピースと、紙パンツを僕に手渡した。
「……」
僕が、のそのそと着替えている間に…ハルトは、他の皆の着替えやメイクを、テキパキと手伝っていった。
ほどなく3人様が、仕上がった。
「今日の俺、一段とカッコいいー」
サエゾウは、鏡を見つめながら…うっとりとした表情で呟いた。
「はいはい…進化したからね」
「進化の程を、しっかり見せつけてやってくれよ」
「任しといてー」
「今日はウチの客も、ちょっとは来るかもしれないからな…」
「えっ…もしかして…あの子達も来るんですか?」
カイの言葉に、ショウヤがパッと目を輝かせた。
「あーたぶんね」
「…こないだのお礼言えるかな…」
そんな風に、少しソワソワしているショウヤを見て…ハルトが言った。
「カオルに時間かかりそうだから、よかったら先に行っててもいいよ」
「えっ…」
「始まるまでには終わらせるから…先に行って、ファンの子達に挨拶しておいでよ」
「…」
3人様は、顔を見合わせて言い合った。
「そうするか」
「…そうだな」
「皆に会えるの久しぶりだしー」
「どんなカオルになるか…楽しみにしてて」
「わかったー」
そして彼らは、支度をして、部屋を出ていった。
「うーん…」
とりあえず着替えた僕を見て…ハルトは更に考え込んでしまった。
「衣装も変えようかな…」
「…」
「カオル…衣装っぽい黒いシャツとか持ってる?」
「あーちょっと探してみます」
僕は、部屋の押入れをゴソゴソと探した。
「あと、半ズボンみたいのは無い?」
「パジャマにしてるジャージならありますけど…」
「…っ」
そして僕は…前のバンドのLIVEのときに着た事がある、まあまあそれっぽい黒いシャツを何枚か出してきた。
「これくらいしか無いですねー」
「…」
「あと、ジャージはこれです」
僕は、まさに今朝まで穿いていたジャージを、取り出して見せた。
「……」
ハルトは、それらを手に取ってしみじみと見ながら、またも熟考態勢に入った。
「よし!」
しばらくして…彼はスクッと立ち上がったかと思うと、ズカズカと僕に近寄って、とりあえず着ていたワンピースを、半ば無理やりに脱がせた。
「…っ」
僕は…
紙パンツにレギンスだけの状態になってしまった…
と、ハルトはまさかの…僕のその、パンツの中に、手を突っ込んできた。
「うわっ…ちょっ…」
「ちょっと我慢してね」
有無を言わさず…彼は僕のモノを、しっかりと上に向かせて、紙パンツでギュッと押さえ込んだ。
「……っ」
その刺激に、感じる暇も無かった。
ハルトは更に、カバンから布テープを取り出した。
レギンスを腿まで下ろして、まさかのその布テープで、紙パンツの上をグルグル巻きにした。
えええーーーっ
心の中で叫びながらも…
僕はなすがままになっていた。
「やっぱり、レギンスは穿いておくべきか…」
ブツブツ言いながら…彼は、再びレギンスを元の状態に穿かせなおすと…僕が出したシャツの中から1枚を選んで…僕に差し出した。
「その上に…これと…このジャージ穿いてみて」
「……はい」
僕は、言われるがままに従った。
着終わった僕の姿を見て…ハルトは言った。
「うん…いいね、シャツもそこそこ長さがあるし…ジャージもまあまあフワッとしてるから…」
「…」
「これなら、カオルの細さを活かしつつも、ヤバい辺りは隠せそうだ!」
「…っ」
ハルトは、とても満足そうな表情をしていた。
下半身が、とても窮屈ではあったが…
確かにこれなら…
イっちゃってもバレないかも…
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