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そーいうプレイの後
結局…いつものように、シルクが居残る事になった。
「だって俺まだ処理してないし」
シルクは、しれっと言ってのけた。
「計画的犯行だろー」
「確信犯だよな」
荷物を纏めて帰り支度をしながら、サエゾウとカイは、やはりいつものように、諦めた様子で言った。
「ま、しょうがないよね」
「言ったら…カオルさんを労うためには、それがいちばんなんでしょうから…」
それぞれが色々な思いを巡らせている事を…ショウヤは誰よりもよく分かっていた。
「個人的な謝罪には口出すなよー」
「分かってるよ」
「あ、ハルトさん、僕たちも早速企画しましょう」
「そうだな…」
「じゃあ、よろしくね」
纏めるようにカイが言った。
そしてシルクは、手を振って皆を見送った。
バタン…
階段を下りたところで、サエゾウがカイに言った。
「また、マスターんとこ行く?」
「あーそうだな、顔出すか」
「俺は今日は遠慮しとく」
「…じゃあ、僕も今日はこれで帰ります」
「あれは…レコ発LIVEは行くか?」
「絶対行くー!…見届けないと気が済まないー」
「あははは…そうだな」
「僕も行きます…写真撮らなきゃいけないから」
「じゃあ、俺も行くかな…」
そしてショウヤは、分かれ道で言った。
「新曲も楽しみにしてますね…あと、次のPVも、前向きに検討してください」
「わかった…」
「お疲れー」
手を振ってショウヤと別れた3人は…駅の反対口のマスターの店へと向かった。
「じゃあ、マスターによろしくね」
「ああ…お疲れ」
店の前で、ハルトとも別れた2人は…例の強面マスターの店に続く階段を下りていった。
「ねえ、カイ」
「何?」
「俺…今日も頑張って好感度上げるからさー」
「うん」
「ご褒美に…また泊まりに来てー」
「…」
カイは、ふふっと笑って…サエゾウの頭を撫でながら答えた。
「わかった」
そして2人は、混み合った店内へと入っていった。
ひとり…自分の家についたハルトは…とりあえず、大荷物の片付けに取り掛かっていた。
(これの出番が無かったな…)
僕用に用意したワンピースを、戸棚に戻しながら…ハルトは小さく溜息をついた。
(まあでも…また違った、あいつの魅力を引き出せたからな…よかった…)
次のLIVEでは、僕に何を着せようか…
彼の頭は、その事でいっぱいだった。
ようやく片付けを終えて…ハルトは、缶ビールを開けながら、スマホを手に取った。
ショウヤからLINEが来ていた。
お疲れ様でした
例の件…いつにします?
(例の件…?)
ハルトさんちでもいいけど…
何ならまた、廃墟スタジオ借りましょうか
「…」
(あーアレか…個人的な謝罪か!)
ポンッと手を叩いて、ハルトは早速返信を打った。
いいねスタジオ
じゃあそうしましょう
先越されないうちに、日程も早く抑えないと
そうだな…金夜とかどう?
それでカオルさんに打診してみます
とりあえず飲みに行くテイでww
わかったw
よろしく
ハルトはスマホを置くと…スクッと立ち上がった。
(そうか…スタジオか…)
彼はニヤニヤしながら、また戸棚を物色し始めた。
(何を着せようかな…せっかくだから、また切り刻んでいいヤツにしよう…)
ハルトの頭は…
今度はその事でいっぱいになった。
「…!!」
何となく寒気がして…
僕はビクッと震えながら、パッと目を覚ました。
電気の消えた、暗い自分の部屋の天井を見ながら…僕は必死に記憶を手繰り寄せた。
横を見ると…
シルクがこっちを向いて寝息を立てていた。
「……ふぅ…」
僕はホッとして…そっと彼の頬に手を伸ばした。
「…ん」
シルクが薄目を開けた。
「残ってて…くれたんだ…」
「…」
シルクは何も答えずに…モゾモゾと僕の首の下に腕を差し込むと、僕の身体を自分の方に抱き寄せた。
「…」
シルク…
僕も彼の背中に腕を回した。
ギュッと抱きしめ合いながら…僕らはどちらからともなく、口付け合った。
何度目かの口付けの後に…僕は囁くように言った。
「皆は…帰ったの?」
「ん…」
「何か…言ってた?」
「…計画的犯行って…」
「あははっ…」
「あと…個人的な謝罪には口出すなって…」
「…あー」
さっきの謎の寒気を思い出して…僕はちょっと果てしない気持ちになった。
それを察してか…シルクは僕の頭をしっかりと抱きしめながら続けた。
「しっかりお仕置きされてこいよ…」
「…」
僕は、彼の髪に指を絡ませてながら言った。
「…わかった…でも、お仕置き頑張ったら…また、シルクの所に行ってもいい?」
「…」
シルクは、しっかりと目を開けて僕を見た。
「何で?」
「…だって…」
「好きだから?」
「うん」
それからシルクは、再びギューッと僕を抱きしめた。
きっとまた…シルク大好きって顔に…なってるんだろうなと思いながら…
僕は心の底から安心して、彼の腕の中で眠った。
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