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個人的謝罪(2)

それはそれはそれは大変だった… 単純にとても恥ずかしいし… スースーするし… 生腕に油が跳ねて熱いし… しかもエロサエが、肩とかお尻とか、やたらと触ってくるもんだから、作業は捗らないし… その上…エロサエに、無理ないレベルで満足度の高い手伝い作業を振り分けなきゃいけないし… ようやく予定通りのメニューを作り終えて、僕は若干ゲッソリした感じでテーブルについた。 一方のサエゾウは、それはそれはご機嫌だった。 「いやー楽しかったー」 「そうですか…」 「今日も美味そうー」 「存分に、召し上がってください…」 「いっただきまーす!」 自分のハイボール缶を、半ば無理やり僕の缶と乾杯させてから…サエゾウは、いつものようにガツガツと食べ始めた。 「うんうん…唐揚げもカオルサンドも美味いー」 唐揚げに、ハムと野菜のサンド… そして葉っぱ(小松菜)ともやしのナムル風… マカロニサラダは、野菜を切る以外の作業を、全部サエゾウにやってもらった。 「俺の作ったサラダ、めっちゃうまー」 「そうですか…よかった」 「カオル食べないのー?」 「…」 僕は、なかなか箸が進まなかった。 相変わらずの裸エプロン姿なもんだから…どうにも落ち着かなかったのだ。 「サエさんも、この格好したら分かりますよ」 僕は若干プンプンしながら言った。 「えー俺の裸エプロン見たいのー?」 「……」 そうは言ってませんけどね… 思ってもないし 「しょうがないなー着替えてもいーよー」 「ホントですか!」 僕は即答すると、スクッと立ち上がって…急いで自分の服を取りに行った。 そして僕は、さっさとエプロンを脱ぎ捨てると、急いでシャツを着てズボンを履いた。 サエゾウが、ニヤニヤしながらずっとこっちを見ているのはわかっていたが…僕は敢えて気付かないフリをした。 そうでもしないと居た堪れなかった… 「そんな慌てなくてもいーのにー」 もぐもぐしながらしれっとそう言うサエゾウを、真っ赤な顔で睨みつけながら…僕は、ストンと座って、今までの遅れを取り戻すかのように、ガツガツと食べ始めた。 うん…苦労したけど、美味しく出来た ようやく味を感じられるようになった… 「そう言えば、頭の傷は治ったー?」 食べながら、サエゾウが訊いてきた。 「…はい、こないだ抜糸しました」 「そっか…よかったー」 彼はハイボール缶をゴクゴクと飲み干しながら続けた。 「ホントに死んじゃうかと思ったー」 「ふふっ…そんなわけないじゃないですか」 大袈裟だなー サエさんは、相変わらず破滅思考なんだな… 「ごめんね…」 思ったそばから… サエゾウは、急にしおらしい表情で、そう言った。 「えっ?」 「…俺のせいでカオルを、いっぱい酷い目に遭わせちゃった」 「…!?」 僕は驚いて言い返した。 「そんな…サエさんのせいじゃ無いと思いますけど…?」 「だって…」 彼は、目を伏せながら続けた。 「レンを紹介したのも俺だし…ケガするくらいにカオルの事疲れさせちゃったのも俺のせいだし…」 「…」 僕は、いつぞやの…宵待ちの公園で、サエゾウが弱音を吐いていたときの事を思い出した。 今回の僕の事や、例の先輩との事で…あんなに破滅思考の彼が、陰でひとりで、どれほどに落ち込んだ事だろうか… それを想像しただけでも…僕は果てしなく、たまらない気持ちになってしまった。 ゆっくりと諭すように、僕は言った。 「サエさんのせいなんかじゃありません」 「…」 「シルクにも怒られました…いくらでも断る理由はあったのに、お前が勝手に行ったんだろうって…」 「…」 「僕が自分で決めて行ったんです…だから、サエさんの審判でお仕置きされたのも、自分のせいです」 「…」 「それに…何ならこの先も、モデルのバイト続けてもいいかなって、思ってるくらい…今はもう、何ともないです」 「えっ…そうなの?」 「サエさんが止めろって言うなら…考えますけど」 「言わないよー」 サエゾウは、若干ムキになって慌てて答えた。 「でもまた、審判は下すー」 僕は、ふふっと笑って続けた。 「それで大丈夫です…」 「…」 「だいたい…そんな事を気にするなんて、サエさんらしくないですよ…」 「…」 しばらく下を向いて考えていたサエゾウは…チラッと上目遣いで僕を見上げて言った。 「…ホントにー?」 「はい!」 僕の元気な即答を確認してから… 彼は、ニヤッと笑った。 それを見て…僕はハッとした。 しまった、やられたか… 「じゃあ、心置きなく…謝罪を続けてもらうかー」 そう言って、胸を張って顔を上げたサエゾウの表情には…既に、しおらしらのカケラも無かった。 「……」 わざとなのか? 天然で、ホントに起伏が激しいのか… わかんない人だよな、サエさんって…

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