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個人的謝罪そっちの2人(2)

「どこに向かってるんですか?」 暗い住宅街を進んでいく2人に向かって、僕は訊いた。 「もうすぐ着きますよ」 「…」 ほどなく、僕らは線路沿いの道に出た。 「あっ…もしかして…」 ようやく僕は…そこが、以前にも撮影に使ったショウヤ家所有の廃墟スタジオに近い事を認識した。 なるほど… この、オカシイ2人が考えそうな事だわ 「さ、行きましょう」 「…」 ショウヤは、思わず無言になってしまった僕の手を取って、足早にスタジオを目指していった。 ほどなく僕らは…スタジオの建物の中に入った。 「…こんなに…暗かったでしたっけ…」 僕は、辺りを見回しながら、呟くように言った。 薄暗い、オレンジ色に近い電球に照らされたその部屋は…まさに廃墟そのものに見えた。 「明るくする事も出来ますよ…」 「…」 「明るい方がお好きなら、そうしますけど?」 「あ…いや…暗くて大丈夫ですっ…」 僕は慌てて、パッと目を伏せながら答えた。 「ハイボールありますよ、飲みますか?」 「…はい」 ショウヤは、備付けの冷蔵庫から、ハイボール缶を取り出してきた。もちろん、レモンサワーとビールも。 仄かな灯りの元で、僕らは小さく乾杯した。 「じゃあ…着替えるから…脱いで」 「えっ…」 ハルトは、ビール缶をテーブルに置くと…既に持ち込んであったであろう荷物の中から、サクサクと衣装的な物を取り出して、僕の方へ差し出した。 「散々悩んだんだけどね…やっぱり和装にした」 「…いいですね…ね、カオルさん」 「…」 いや、そこで同意を求められても… どうせ拒否権無いんでしょう? 僕は、大きく溜息をつきながら…それを受け取った。 「あ、ハルトさん…ちょっと待ってください…着替えるところから撮りたいです!」 ショウヤがバタバタとカメラを取り出しながら言った。 「せっかくですから、あっちで着替えましょう」 「……」 僕は、なすがままにハルトに連れられて…廃墟の中の、割と良いロケーションの部屋に立たされた。 「はい、どうぞ…始めてください」 「…」 監督のひと声を聞いたハルトは…ニヤッと笑いながら、僕の服をゆっくりと脱がせ始めた。 わざと、いやらしい感じに、徐々に素肌を露わにされる感触に…僕は、たまにビクッと身体を震わせてしまった。 「相変わらず敏感だね…」 「…っ」 完全に全裸にされる頃には…既に僕のモノは、そこそこいきり勃っていた。 「…はぁ…はぁ…」 カメラを回すショウヤの息が、こちらにも分かるくらいに上がっていた。 「どうせまた脱がせちゃうんだけどね…」 呟きながらハルトは、白い和服の袖に、僕の両腕を通していった。 テキパキと僕の着付けを終えた彼は、いったん僕をまた、ハイボール缶が置きっ放しのテーブルの前に座らせた。 「少し休憩してて…俺たちも着替えるから」 「…!」 ハルトは、荷物の中から、また衣装的なものを取り出して…そのうちのひとつをショウヤに手渡した。 2人は黙々と…それに着替えた。 さすが…オカシイ人たちは、徹底してるな… やっぱサエさんにも、裸エプロンさせるべきだった ハイボール缶を飲みながら、そんな事を考えているうちに、2人の着付けも終わった。 僕と同じような白い和装だった。 「ショウヤも可愛いね」 「ハルトさんこそ…」 「……!?」 見つめ合った2人は…まるで吸い寄せられるかのように、どちらからともなく口付けた。 「…」 僕の存在なんか忘れてしまったかのように…暫くの間、激しく舌を絡め合った2人は…ようやく口を離れると、うっとりしたような表情で言い合った。 「今日は…とことんカオルで遊ぼう…」 「はい、楽しみましょう」 「……っ」 2人はゆっくり、僕の方を見た。 まるで、魔界から降りてきた人たちを連想させるような…淫猥と嗜虐に満ち溢れた、2人のその絡み付くような視線を向けられて… 僕はもう、何だかそれだけで、身体の動きを封じ込められてしまうような気がした。 怯えた目で、2人を見上げながら少しだけ後退った僕は…すぐにショウヤはすぐに捕まってしまった。 「良い顔ですね…」 「ああ…もっと可愛くしてあげるからね…」 ショウヤは、僕の両腕を背中に回して抑え付けると…ハルトの前に突き出した。 ハルトは、いつものようにメイク道具を取り出した。 「目…瞑って…」 「…」 彼は僕の瞼に…アイラインを引いていった。 「いいって言うまで、目を開けちゃダメだよ…」 「…っ」 いつものその台詞は…僕の頭に、いつものその続きを思い浮かばせた。 まさに条件反射のごとく…僕の身体は、勝手にそれに反応して、徐々に熱さを帯びてしまった。 「…ん…んっ」 そして、いつも通りに…僕はくちびるを塞がれた。

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