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謝罪のあと(1)
「今日は休みなんだろ?」
「…はい」
「悪かったね…ゆっくり休んで」
「…はい…」
「あ、シルクにLINEしといたから」
「…そうですか…」
翌朝…カイはそう言い残して、心身共にスッキリした様子で帰っていった。
「ふうー」
僕は、裸で布団に横になったまま…
大きく溜息をついた。
ただでさえ『激しいカイさん』に…
気が済むまでガッツリヤり倒されたおかげで、全く起き上がる事ができなかったのだ。
想定以上だったな…
どんだけ精力有り余ってんだか…
ま、それでこその、
あのパワードラムなんだろうけど…
そんな事を思いながら…
僕はそのまま目を閉じて、また眠ってしまった。
どのくらい時間が経っただろうか…
僕は、LINE電話の着信音で、目が覚めた。
「…うーん…」
手を伸ばしてスマホを取って見ると…
着信画面に、シルクの名前が表示されていた。
僕は慌てて、通話スイッチを押した。
「…はい」
「あ、寝てた?」
「…うん」
「どーよ、調子は…」
「うーん…あんまり良くない…」
「あはははっ…」
「…もうー…笑い事じゃないよ…」
それでも僕は、シルクがこんな風に電話をかけてきてくれた事が、嬉しくて仕方なかった。
「しょうがないから、お見舞いに行ってやろうか」
「え…ホントに…?」
「お腹空いてんだろ?」
「…うん」
「何か作ってやる…」
「…ありがとう…」
そして電話を切った僕は、とてもほんわかした気持ちで、再び目を閉じた。
ピンポーン
おそらくシルクであろう呼鈴で、僕は目を覚ました。
「何だよ、開けっ放しじゃんか…」
ドカドカと入ってきた彼は、持ってきた荷物をキッチンに置くと…僕が寝ている布団に近寄ってきた。
「…おはよう、シルク…ありがとう…」
僕は、半ばボーッとしながら言った。
「もう夕方だけどな…」
「あ、ホントに…?」
そんなに寝てたか…
「相当手酷くヤられたらしいな…」
「うん…やっぱりカイさんは激しかった…」
「ふふっ…そうか…」
そう言って、僕の髪をスッと撫でてから…シルクは立ち上がってキッチンに行った。
ガサゴソと、持ってきた袋から何やら取り出して…キッチンの棚を、バタバタと開けた。
「勝手に使うぞ」
「うん…お願いします…」
それから…冷蔵庫を開け閉めする音や、フライパンをコンロに置く音…それから食器のガチャガチャ鳴る音なんかが、僕の耳に響いてきた。
僕は、目を閉じて…心地良くそれに浸った。
「出来た…」
ほどなくシルクが、僕に声をかけた。
「…ん」
僕は、ゆっくり上半身を起こした。
「素っ裸かよ」
「…あっ」
僕は顔を赤くして、慌てて服を探した。
「いーよ、シャツだけで」
「えっ…」
「そんくらい、俺にもサービスしてよ」
「…っ」
そういうわけで…僕はとりあえずシャツだけ羽織った姿で、テーブルについた。
「うわあーー美味しそう!!」
鶏肉の和風ソテーもやしと青菜の和え物添え
野菜とハム、ゆで卵のサラダ
さつま揚げと大根の煮物
そして、ひじきご飯に漬物
三つ葉とお麩の入ったすまし汁
まあ、食器がウチのヤツだし、テーブルも狭いので…シルクんちで出るのに比べたら、盛り付けを含めた完成度は、若干下がるのかもしれないが…
そんなものを差し引いても、あまりにも豪華なメニューの数々だった。
「お疲れ…」
「ありがとうございます…」
僕らは、シルクが持ってきてくれたハイボール缶で乾杯した。
「…いただきます」
両手を合わせて、ガッツリ頭を下げて挨拶してから…僕は早速、それらに箸をつけていった。
「うん…うん…美味しい…」
鶏肉もご飯も…勿論その他も、本当に美味しかった。
僕はバクバクと食べ進めた。
「今日はあり合わせだけど…今度また改めてだな…何か食べたいもの考えといて」
「えっ…作ってくれるの!?」
シルクは、穏やかに微笑みながら続けた。
「昨日のカイもだけど…サエとか、あの2人とかとも、散々ヤり散らかされたんだろ?」
「…んー…まあ…」
僕は、色々なオカシいプレイの数々を、思い返しながら…モゴモゴと答えた。
「全部終わったら、また来るって…言ってたよな」
「……っ」
覚えてて…くれたんだ…
僕は思わず…手を止めて、シルクを見た。
顔を背けた彼は…少しだけ、顔を赤らめているように見えた。
じわじわと…僕の目から、涙が溢れた。
「本当に…ありがとう…シルク…」
「な、何だよ」
嬉しくて、嬉しくて…仕方なかった。
シルクが、来てくれた事…
僕のために、こんなにごはんを作ってくれた事…
そして、約束を覚えていてくれた事…
僕は…
僕は、本当に…何て幸せ者なんだろう…
嬉しくて、涙が止まらなかった。
いつまでも、ポロポロと泣き続ける僕の髪を…シルクは、優しくそっと撫でた。
「そんなに泣くなよ…早く食べろ…」
「…う…うん…」
僕は、涙を拭いて…再び箸を取った。
それから僕は、たまに泣きじゃくりながら…
しかもちょっと恥ずかしい格好で…
シルクごはんを、しっかりキレイに完食した。
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