388 / 398

謝罪のあとの穏やかな時間

シルクに奥まで何度も突かれ、朦朧と絶頂を漂い続けた僕は…昨夜からの疲れも手伝って…彼の吐精の感触を最後に、そのまま目を閉じて、眠り込んでしまった。 いつものように、シルク母さんは…僕の身体をきれいに拭いてから、きちんと布団を掛けてくれた。 「…」 そして…スースーと寝息をたてる僕の髪を、優しく撫でながら…シルクは密かに顔を顰めた。 (昨日はここで…カイとヤったんだよな…) (いや…言ったら、サエともあっちの2人とも…散々ヤってんだし…) 「…」 (気にならない…って言ったら嘘なんだろうな…) そんな風に考えてしまう、自分の気持ちを振り払うように…シルクは勢いよく立ち上がると、キッチンに戻った。 そして、換気扇の下で、煙草に火を付けた。 「ふうー」 (それでいいって…何度も思ってんのにな…) 煙草をふかしながら… 彼は必死に自分に言い聞かせていた。 (人間の気持ちって…何でこんなに面倒くさいか…) それから、煙草を揉み消したシルクは…部屋の電気を消して、再び布団に戻ると、僕の隣に潜り込んだ。 (カオル…) 彼は、眠っている僕の身体を…ギュッと抱きしめた。 「…ん…」 「…っ」 モゾモゾと動いてから…再びスースーと寝息をたてた僕の頬に…シルクはそっと、何度も口付けた。 翌朝になって、僕はようやく目が覚めた。 「…うーん」 目の前に…シルクの顔があった。 「…」 それを確認した僕は…言いようのないほどの、安堵感と幸福感に包まれた。 僕は、彼に擦り寄って…その胸元に顔を埋めた。 「…ん…」 今度はシルクがモゾモゾと動いた。 僕を確認した彼は…両腕で、僕の頭をしっかりと抱きしめた。 そのまましばらく、彼のぬくもりに浸っていたものの…段々と息苦しくなってきてしまった僕は…彼の両腕をゆっくり解いて、顔を上げた。 「ふうー…」 「…」 「おはよう…」 「…ん…」 そして僕らは…何度も何度も、口付け合った。 離れてもまたすぐに吸い寄せられるように… お互いが愛おしくてたまらないように… 何度目か、いや…十何度目かの口付けの後に…シルクは身体を起こして、僕の上に覆い被さってきた。 「…」 上からじっと僕を見下ろして…そしてまた彼は、僕に口付けた。 ゆっくり口を離れたシルクは…僕の身体を抱きしめて、僕の肩に顔を埋めながら言った。 「…起きるか」 「…うん」 「今日の予定は?」 「何もない」 「お前、最近ヒマ過ぎない?…ちゃんとバイト行ってんの?」 「…んーあんまり言ってない…」 「何で?」 言いながら彼は頭を上げて、また僕を見下ろした。 「…モデルのバイト…再開する事にしたから」 僕は、若干モゴモゴしながら言った。 「あーなるほど…」 言いながらシルクは、ゴロンと横に転がった。 「…あ、でも…あの人ん所には行ってないよ!」 僕は思わず、取り繕うように続けた。 「…」 シルクは、僕の方を見て…ニヤッと笑って言った。 「別に何も責めてねーよ」 「…っ」 「いいんじゃない?…お前が良いなら…」 彼は、人差し指で、僕の鼻を押さえながら続けた。 「効率よく稼げるに越した事ないだろ…」 「……」 「ま、体調崩さない程度にな…」 「…」 僕は、少しシュンとして…目を伏せた。 「だーかーらー」 シルクは、そんな僕の鼻を…ギュッと摘んだ。 「んーっ…痛いっ…」 「気にすんなって言ってんだろ」 そして、手を離した彼は…僕の頬を撫でながら、再び僕に、軽く口付けた。 「さてと…」 彼は、うーんと両腕を上に挙げて伸びをしてから…バサッと上半身を起き上がらせた。 「まずは風呂入ってこい」 「…あー…そうだね…」 僕は、少し面倒くさそうに…モソモソと起き上がった。 「風呂入ったら…デートするか」 「…う、うん」 「で、買い物して…ウチに移動して何か作るか」 「うん!!」 それを聞いて、パァッと元気になった僕を見て…シルクはまた、少し嬉しそうにクスクスと笑った。 それから僕は、張り切って風呂に入った。 その間シルクは、自分のスマホをいじったり…ウチにあった漫画を読んだりして、待っていてくれた。 一緒に入ってくれても…よかったんだけどな… なんて、少し思いながらも…僕はテキパキと、髪を乾かして、色々と支度を整えていった。 これでもかって言うくらいに、アイロンで必死に髪を伸ばす僕の様子を見て…シルクはニヤニヤしながら言った。 「何で、そんなに気合い入れてんの?」 「…っ」 僕は、少しだけ顔を赤らめた。 「俺とデートだから?」 「…」 もうー 意地悪なんだからー 思いながらも… 僕は自分の中に、何かが湧き上がってくる気がした。 何となく、ほわ〜っとしながら…僕はその、湧き上がる何かに従順に、穏やかに笑いながらシルクの方を見た。 そして、彼の目を見つめながら答えた。 「うん…」 「…!!」 少し驚いて、慌てふためいたように…今度はシルクが、顔を赤くして目を伏せてしまった。 「…?」 そんな、珍しく小さくなっている彼の様子を見て…僕は、ハッと気付いた。 そうか…もしかして… これが銀色の感覚なのかな…?   僕は初めて…ほんの少しだけ自覚した。

ともだちにシェアしよう!