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謝罪慰労会(5)
身体も心もお腹いっぱいになった僕は…いつものように、そのまま意識を失ってしまった。
とっくに吐精した酔っ払いシルクは…そのまま、自分のモノを僕の中に残したまま…いつまでも余韻に肩を震わせていた。
「…はぁ…はぁ…」
彼は、若干取り憑かれたような表情で…僕の身体を、両手で撫で回した。
もし、僕にまだ意識があったなら…おそらくまた、反応してしまうであろうくらいに…彼は執拗に僕の身体のあちこちを弄り続けた。
「…」
最後にシルクは、目を閉じたままの僕の顔を両手でそっと包むと…何度も何度も、僕に口付けた。
そして、力強く…僕の身体を抱きしめた。
そうしているうちに…
うっかりシルクも、ウトウトと眠ってしまった。
どのくらいの時間が経っただろうか…
辺りはすっかり暗くなっていた。
「…」
ふと目を覚ましたシルクは、ダルそうに、ゆっくり身体を起こすと…ようやっと自分のモノを、僕の中から引き出した。
そして、若干覚束ない手で…僕の身体を拭いてから…再び僕の隣に、ドサッと倒れ込んだ。
「ふぅ…」
小さく溜息を吐いて…彼は僕の身体に布団をかけると、仰向けになって、天井を見上げた。
寝起きのボーッとした頭で…シルクは必死に頭の中の邪念を追い払おうとしていた。
何度も自分に言い聞かせているのに…勝手に湧き上がる思いを、彼はどうしようもなく持て余していた。
(激しいカイさんの日ww)
そんなサエゾウからのLINEの文字が、頭に蘇った。
(それも受け入れるって…)
(いや、他のヤツらんときだって…皆でヤってるときだって…俺は全部受け入れるって、言ってんだろ…)
(実際こいつは、俺とヤるより、皆でヤる方が好きなんだし…)
必死にそれらを封じ込めながら…シルクは右腕で、自分の目を覆った。
(考えるな…もう、何も考えるな!)
彼はブンブンと頭を横に振ると…寝ている僕の身体を、グイッと自分の方に抱き寄せた。
(こいつと一緒にいる…この時間を大事にしよう…)
そっと僕の頬に口付けて…
シルクは穏やかな表情で、再び目を閉じた。
ただでさえ激しい謝罪のあとに、結局また謝罪させられた僕は…溜まっていた疲れと、シルクと一緒にいる安心感もあって、朝までグッスリ眠ってしまった。
「…う…ん」
目が覚めて…隣にシルクが居ない事に気付いた僕は、慌てて身体を翻しながら起き上がった。
「…」
彼は既に起きて、PCの前に座っていた。
少しホッとして…僕は再び布団に仰向けになった。
「来週…また出張だ…」
僕が起きた事に気付いた彼が、呟くように言った。
「…どこに行くの?」
そう訊きながら…僕はまた、ゴロンと転がって…シルクの方を向いた。
「大阪」
「へええーいいなあ〜」
「一緒に行くか?」
「えっ…」
僕は、飛び起きた。
「…行って…いいの?」
「今回、作業じゃなくて…ちょっと話しに行くだけだから…たぶんすぐに終わるし」
「行きたい!」
僕は布団から飛び出して、シルクに駆け寄った。
「…い、いつ?」
「来週の水曜だけど…バイトは?」
「大丈夫、その日は無い」
「じゃ、行くか」
「う…うん!」
寝起きからの、だんだんと思考が追い付いてきた僕は…その突然の展開に、段々と嬉しさが込み上がってきた。
シルクと一緒に、大阪に行けるって…
そ、それって…ものスゴい事じゃない!?
「ほ、ホントに行っていいの…?」
ゆ、夢じゃ…無いよな…
僕は、頬っぺたを抓りたい衝動にかられながら…
若干声を震わせて訊いた。
「うん…」
シルクは何でも無いように続けた。
「何なら…折角だから、泊まるか…」
「えええっ!?」
僕は更に目を丸くしながら聞き返した。
「と、泊まっても…いいの…?」
「うん…じゃあテキトーに宿探しとくわ…」
シルクはまた、何て事は無いように…そのままPCのマウスを操作し続けた。
シルクと一緒に…大阪に行って…
しかも泊まるって…
「……」
PCの前に座るシルクの…足元にしゃがみ込んで、彼を見上げながら…やっぱり僕は、自分の頬っぺたを両手でギューッと抓ってしまった。
「うん…痛い…」
「何してんの…」
呆れた表情のシルクが言った。
「だって…夢じゃないかと思って…」
「バカなのか…」
ふふっと笑いながら…彼は片手で僕の頭をポンポンと撫でた。
「謝罪も頑張ったし…週末は光鬱も頑張るんだろ?」
「…うん」
僕は、少しハッとしたように…小さく頷いた。
「出張ついでで悪いけど…旅費は経費でもってやるよ」
「…ホントに!?」
「ああ…」
僕は、嬉しさに震えながら、ようやく立ち上がると…思い切りシルクに抱き付いた。
「ありがとう…」
「…」
そ!から彼は、僕の背中を抱き返しながら…釘を刺すように言い加えた。
「あんまりアヤメとイチャイチャしてたら、無かった事になるけどなー」
「……」
あー…それだったら…
あんまり期待するのは止めといた方がいいかもな…
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