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ガルム×キサラギ 5.出張
「厭だ」
即答だった。私が出張に行くと言ったら食い気味に否定された。
「嫌か嫌じゃないかの問題じゃない。もう決まってるんだ」
「断れ」
「無理だ、これでも引き延ばしたんだぞ」
ガルムが悲しむからと予定を先延ばしにしていたがこれ以上は引っ張れない。もう決まってしまったことだし私も行った方がいいと思う。
「………………。いつまでだ」
「一年だ」
「一年も待たせるのか?お前は…」
仕方ないだろうと何度言っても聞いてくれない。彼は我儘なのでこういうときが一番大変だ。説得は得意ではない。
「すまないとは思ってる、でも」
「…、もういい。勝手に行け」
ガルムは拗ねてしまったのか、こちらを見ることもしないで部屋を出て行った。
何とも言えない気持ちになりながらも、今回は仕方がない。スレヴは今人手が足りないらしいから。いや、今のご時世どこでも人手不足ではあるのだが。
「はぁ………」
ため息をついて寝支度を済ませる。いつもならもう少しは音があって孤独を感じない部屋なのに静まり返って不気味なくらいだった。思い起こせば最近は彼が私の部屋にいるのはごく当たり前のことになっていて孤独なんて感じなかった。彼がいない部屋はなぜか寒く感じる。
「私だって…寂しい」
ベッドで丸くなり、ぎゅっと布団を握りしめた。こんな感情、いらないのに。
「馬鹿」
一人きりはもう嫌だ。だからこそ私だって引き延ばして遅らせてきた出張。行きたくもない。スレヴは大好きだがガルムと離れたくないと思うようになってしまった。それほどまでに私たちは……。
恋人にはなれないくせに、愛してしまうのはなぜなんだ。私はどうしてしまったんだろう。苦しい気分になりながら私は寝ることにした。
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