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第3話
まずは乗り気ではないけれど、麻生さんが参加する事が分かった時点で飲み会に参加して親密度を上げる事にした。
麻生さんは年配の職員たちからは嫌われているようだったけれど、年下の若い職員たちからは好かれていて、両隣には常に若い職員が座り、麻生さんにお酌をしていた。
僕は面倒臭い連中の相手をした後、トイレに行く麻生さんの姿を発見してそれを追いかけるようにトイレに向かった。
「おー、涌井。楽しんでるか?」
トイレに入って用を足していると、個室から麻生さんが出てきて笑顔で僕に話しかけてきてくれた。
色白のお顔はお酒で赤らんでいて、とても可愛らしく見えた。
「えぇ、まぁまぁです」
「お前が参加するって聞いた時は驚いたよ。こういうの好きじゃなさそうだと思ってたから」
いつもは黒縁の細めな眼鏡をかけている麻生さん。今日はコンタクトなのか眼鏡を外していて、白いTシャツに濃紺のジーンズ姿だった。
腕や胸の辺りは少しピッタリめで、僕的には色っぽい服装に見えて仕方なかった。
「これも仕事のうちだと思いまして」
「ははは、確かにそうかもな。俺の若い頃は夜勤以外の職員は全員参加、みたいな飲み会がよくあったよ」
当たり障りない会話をして、一緒にトイレから出て、そのまま麻生さんの隣をキープする。
「へー、お前、ワインが好きなんだな」
「えぇ、特に赤ワインが好きなんですよ」
「ワイン好きなんてオシャレだな〜」
美味しそうにビールを飲む麻生さん。
お酒が好きという情報は既に入手済みで、特にビールが好きだという事も調査済みだ。
「麻生さんはワイン、あまりお好きではありませんか?」
「ん〜、ビールが1番好きだけど、飲めなくはないかな。でもワインって色んな種類あるじゃん。たまに飲みたくなるけど何買っていいか分かんなくてな〜」
「でしたら今度、僕に声かけて下さい。ワインの事、勉強中で色々飲み比べしているんです」
ちょっと強引だっただろうか。
そう思ったけれど、酔った勢いという事で口走ってしまった僕の誘いを、麻生さんは二つ返事で受け入れてくれた。
日にちも来週の休日と決まって、連絡先まで交換出来た。
予想以上の進展に、僕は飲み会の後、嬉しすぎて興奮して眠れなかった。
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