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第11話

麻生さんと特別な関係になって半年。 そろそろ次のステップに進もうか、なんて考えていた時の事だった。 僕の前に突然、ひとりの男が現れたのは。 異動してきたその男は岡江優斗(オカエユウト)という名で、かつて麻生さんと同じ夜勤班だったらしく、麻生さんとの距離が物凄く近くて僕の癪に障った。 「麻生さん!今日飲みに行きましょうよ〜!!」 「今日か?いきなりすぎるだろ」 「え〜?麻生さん、前は夜勤明けの日は飲みに行ってくれてたじゃないすか〜!!」 更衣室で騒がしくしている岡江。 僕より年上らしいが、背も僕より小さく、顔立ちもどこか子供っぽくてそう思えなかった。 「前って、あれから何年過ぎてると思ってんだよ。俺ももう若くねぇんだって」 麻生さんが岡江を窘めながら僕を見る。 申し訳なさそうな瞳。 麻生さんにその気がない事が分かり、僕は安堵し、それと同時に思った。 この勘違い男に、麻生さんが誰のものなのかを分からせたい、と。 「麻生さん、飲みに行くんですか?僕もぜひ御一緒したいです」 「涌井……」 僕の言葉で周りがそれなら飲み会やりましょう、と盛り上がり、その夜は飲みに行く事になった。 最初のうちは父親に気に入られたいという連中に囲まれていた僕。 麻生さんはそんな僕の真向かいに座り、その隣には嬉しそうにしている岡江の姿があった。 僕はタイミングを見計らって席を抜け出すと、外に出て麻生さんに電話をかけ、麻生さんを呼び出す事に成功していた。 「抜け出すの上手いなぁ、お前」 黒のパーカーに黒いジーンズの麻生さん。 だいぶお酒を飲んだその顔は赤らんでいて、今すぐにでも襲いたいくらい可愛らしい。 「麻生さん……」 こんなに無防備で、僕の気も知らないで。 僕は人目も気にせず、その場で麻生さんにキスしてしまっていた。 「ちょっ……流石にここはマズイだろ……」 「僕は平気です。貴方との関係が知られたって構わない。むしろあの岡江とか言う人に知らしめたい、麻生さんは僕のものだって……」 「お前、岡江に嫉妬してたのか。あいつはただの後輩だって。お前とは違うよ、涌井」 僕の苛立ちを、麻生さんは怒らずに優しく宥めてくれた。 僕を抱き締めてくれて、背中を撫でてくれた。 「で、どうしたいんだ?」 「…………」 僕は正直な気持ちを口にした。 『麻生さんとふたりきりで一夜を過ごしたい』 そう言うと、麻生さんは、 「分かった。俺に任せろ」 と笑顔を見せて僕に言ってくれた。

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