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第6話 尖る神経 <Side 愁実

 毎度毎度、胸だの尻だのと下ネタ談義に付き合わされるコトに、疲れていた。  あと2週間もすれば始まる夏休み。  オレは、その間に学校を辞めてしまおうと考えていた。  オレの家は、困窮状態だった。  腰が痛い、肩が張る…適当な言い訳を並べ、すぐに仕事を休む父。  勤務態度を理由にクビを切られるコトも、多かった。  小さな頃は、父が家に居るコトが嬉しかったが、母は常に苛ついていた。  堪えられなくなったのだろう母は、高校に入学したばかりのオレを置いて、家を出て行った。  母が居なくなったコトで心を入れ替えたのか、真面目に働こうとした父だが、定職には就けなかった。  なんとか雇ってもらえたとしても、短期集中のアルバイト程度で、生活はギリギリ。  そのせいなのか、少しずつアルコールに頼るコトが増えていった。  学費に関しては、奨学金制度を利用しているため、問題はなかった。  だけど、あまりにもギリギリの毎日で、学校を辞めて働こうと考えていた。  辞めるなら、もう繕う必要もないだろうと、隠していた性癖を暴露した。  まさか、郭遥に聞かれてしまうだなんて、思いもしなかった。  バチッと絡まった視線を、何事もなかったかのように(ほど)き逸らせる。  心臓だけが、バクバクと激しく脈打っていた。  何日間かは何事もなく過ぎていった。  顔を見れば、挨拶をする程度の仲だ。  郭遥自身、人を揶揄(からか)うような性格ではない上に、その程度の仲であるオレの繊細な部分に、あえて触れてくるはずもない。  オレの性癖がバレただけで、好意が伝わった訳じゃない。  意識し過ぎだと、自分を嗤っていた。  気の抜けた頃、日直が回ってきた。  郭遥と2人きりの空間に、意識しないようにしようと足掻く頭が、余計に神経を尖らせていた。

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