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第7話 夢なら覚めるな

 オブラートに包むように、〝女に興味がない〞というオレの発言は本当なのかと探りを入れられた。  別に嘘を吐く必要もないだろうと、本心だと認める。  気色悪いだろうと呟くオレに、郭遥の否定が重なった。  でもその言葉は、郭遥の気遣いに過ぎない。  聞いた手前、気持ち悪いだなんてバッサリと切り落とすような言葉を吐けないだけだ。  軽口を叩き場の空気を軽くしようと試みるオレに、郭遥は真面目な声で嘘を見抜く。  この話が続くのかと、半分、自棄(やけ)になっていた。  早くこの話題から逃れたいオレは、お前が好きなのだと、白状する。  自分がそういう目で見られているのだとわかれば、郭遥も深追いはしてこないだろうと、口を割った。  いっそのこと気色悪いと嫌悪感し、突き放してくれれば、オレの心に郭遥への想いが、こびりつき残るコトもない。  でも、伝えてすぐに、後悔が胸に蔓延った。  郭遥に嫌な思いをさせてしまったであろうオレの告白。  冗談として誤魔化してしまいたい臆病な自分と、郭遥を好きな気持ちを否定したくない自分が、せめぎ合う。  混濁したオレの心が出したのは、郭遥にすべてを忘れてもらえばいいのだという結論だった。  気持ちの悪い告白も、オレという人物が存在したコトも、すべてまとめて記憶から消去されれば、郭遥が抱いた気持ち悪さも少しはマシになるだろう。  どうせ夏休みには、いなくなるつもりだった。  学校を辞めてしまえば、会うコトもない。  会えなくなれば思い出すきっかけもなくなり、こんな不慮の事故でしかない記憶は、郭遥の頭から消えてなくなる。  ガタンっと大きな音を立て、立ち上がった郭遥に、切る金すらなく無造作にまとめていた髪を鷲掴みにされた。  驚きに見上げた瞳の先、ゆるりと落ちてきた郭遥の唇が、オレに触れる。  気持ち悪くなくて、オレが好きで、忘れるつもりなどない……紡がれた郭遥の言葉を理解するのに、時間がかかった。  夢の中に、放り投げられた気分だ。  どこからか、いつの間にか、夢の中に迷い込んでいたのだろうかと思えるほどに、気持ちが舞い上がっていた。  夢なら覚めるなと、髪を握る郭遥の袖を掴んでいた。  夢見心地なオレの唇に、ちくりとした痛みが走る。  痛いのだから夢ではないと笑う郭遥に、幸せを噛み締めながら、改めて〝好きだ〞と紡いでいた。

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