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第13話 可愛いコトを

 屋敷について、車を降りる。  玄関前に到着すれば、中から古原(こはら)が扉を開けてくれた。 「お帰りなさいませ、郭遥さま」  使用人の中でも古株の古原は、それなりに年齢を重ねた女性だ。  目線を下げたままの古原は、雨に濡れた俺のジャケットを受け取り、瞬間的に驚きの空気を露にする。 「ゲリラ豪雨にやられた」  濡れた理由を説明する俺に、顔を上げた古原は、傍に立つびしょ濡れの愁実に瞳を留める。 「なんか身体が温まるもの用意してもらってもいい?」  俺の声に、はっとしたように視線を向けた古原は、〝かしこまりました〞と頭を下げた。 「2階のゲストルームにいるから」  愁実の手を掴み、そのまま家の中へと誘う。  2階のゲストルームは、20畳ほどのワンルームで左奥にセミダブルのベッドが置かれ、衝立てを挟み、正面の窓辺付近にダイニングテーブル、入口側には、ゆったりと寛げるスペースが設けられている。  入口の右横の扉は、シャワー室に続く脱衣所とお手洗いだ。 「適当に座ってて」  ゲストルームへと通した愁実に声をかけ、少しだけ待ってもらい、自室から自分と愁実の分の着替えと必要になりそうなものを手に戻る。  ゲストルームに戻った俺の目には、入口付近で佇んでいる愁実の背中が映る。  3人掛けの革張りのソファーや、ロッキングチェア、ビーズクッションまで座れる場所は山ほどある。 「どうした?」  ぽかん立ち尽くしている愁実に、背後から声をかけた。  驚いたように振り向いた愁実は、困ったように笑む。 「あ、いや。迷っちゃって……」  選択肢がありすぎて、逆にどこに座ればいいのかと悩んでいたようだ。  可愛いコトを言う愁実に、ははっと小さく笑いが漏れた。  自室から持ってきたものを奥のセミダブルベッドの上に放ち、愁実の着替えを手に戻る。  立ったままでいてくれたコトは、好都合だ。  愁実の腕を掴み、ゲストルームにあるシャワー室へと誘う。  淀みない誘導に面喰らいながらも、愁実は俺の後をついてきた。  脱衣所に愁実を押し込み、下着とカラーシャツ、柔らかなカーゴパンツを側に置く。 「そのままじゃ風邪、引くだろ? 少しでかいかもしれないが、俺ので我慢してくれ」 「あ、え……」  バスタオルが格納されている棚から2枚を手に取り、ひとつを着替えの上に乗せた。 「湯船じゃなくて悪いけど、とりあえず身体を温めろよ」  伝えたいコトだけを紡いだ俺は、脱衣所の扉を閉め、ふぅっと深く息を吐く。

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