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第19話 ただ想い合っているだけ
違う、…間違っていると紡ごうと上げた瞳には、至極真っ当な意見だと、揺るがない郭遥の顔が映る。
そこに、引け目や悪気など、一切ない。
「好きだとか嫌いだとか、そんな感情の話じゃなくて、…倫理感の、もん……」
「でも俺は、お前が好きだ。……世間から見たら、間違ってると言われるかもな」
ふっと吐かれた息は、全世界が敵になっても自分には捩じ伏せられるとでも言いたげな自信が満ちていた。
黙るオレに、郭遥は言葉を足す。
「俺は、別れる気なんてないからな」
細くなった郭遥の瞳が、オレを見下ろす。
放してやるものかとでも言わんばかりに、オレの手首を掴む郭遥の手に力が入った。
「別れるもなにも、付き合ってもないだろ」
刺さる郭遥の瞳から逃げるように顔を背け、言葉を吐いた。
オレたちはただ、お互いを想い合っているだけだ。
「俺は恋人だと思ってる。お前の告白も聞いた。俺も答えた……両想いなのに、恋人にならない方がおかしいだろ」
呆れ紡がれた郭遥の言葉に、オレが間違っているのかとさえ、思わされる。
煩 わしそうに舌を打った郭遥が言葉を繋ぐ。
「世間なんてどうでもいいし、許嫁なんてもっとどうでもいいんだよ」
空いていた郭遥の手が、そっぽを向くオレの頬に触れた。
「俺の気持ちは俺のもので、お前がどんなに否定しようと俺の気持ちは変わらない。お前を好きなこの気持ちを曲げるつもりはない」
頬に触れていた手が顎を掴み、くっと入れられた力に、オレの顔が郭遥に向けられる。
覆い被さる影と、柔らかな唇の感触。
煩いと叱るように、キスで言葉を封じられた。
何度となく重ねられた唇が、名残惜しそうに離れていく。
「名前しか知らない相手に、義理立てするつもりなんてない。目の前に好きなヤツがいるんだ……なんで我慢しなきゃならないんだ?」
オレの瞳をじっと見詰めながら、納得させられるだけの理由があるのなら言ってみろと、喧嘩腰に言い放たれた。
我慢など、オレだってしたくない。
出来るなら、手放したくなんてない。
涙の潤む瞳で、物欲しげに見上げてしまう。
オレは無意識に、郭遥のシャツを掴んでいた。
「どうせ18歳になるまで結婚など出来ない。それまでは自由だ」
捨てるように言葉を吐いた郭遥は、再びオレの唇に喰らいついてきた。
自分は、結婚するまでの繋ぎ……遊び相手に、過ぎないんだ。
これだけの男の妻ならば、過去など気に止めない…、愛人の1人や2人、気にしないのかもしれない。
男のオレならば、罷り間違っても妊娠などしない訳だし、責任問題に発展しようもない。
オレならば、ちょうどいい遊び相手に、なれる……。
都合の良い解釈で、目の前の欲に溺れる。
入れてくれとせがむように唇を舐める郭遥の舌を、食んでやる。
キスでオレの意識を翻弄ながら、服を1枚ずつ剥がしていく郭遥の手。
オレも負けじと、郭遥の服を脱がせにかかる。
脱いだ服と一緒に余計な考えを床へと捨て、縺れるようにベッドへと向かった。
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