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第44話 BAR 恒春葛

 約束通り、1時間後に店の側まで到着した。  記された住所の場所は、小料理屋や喫茶店、バーや居酒屋が立ち並ぶ、一昔前の商店街のような通りだった。  番地は名刺に記されていても、外装はわからない。  看板を追い、店を探すしかないと(いささ)か面倒に感じた。  顔を上げ看板を追う俺の視線に、先程のスラックスの上に襟回りの大きく開いたワイシャツとジャケットを羽織った三崎の姿が映り込んだ。  色気を侍らせるその着こなしに、ラフな印象は消え、大人びた雰囲気が漂う。  俺を見つけた三崎が、軽く手を上げた。  綺麗にスーツを着こなす三崎の姿に、頭から足先まで視線を滑らせる俺。 「さっきの格好よりハマってるでしょ? こっちが本業だからね」  くすりと笑った三崎は、〝恒春葛〞と書かれた看板を親指で指し示した。  店名の上には〝BAR〞の文字が、書かれていた。  店の扉には、〝close〞の札が掛けられていたが、鍵を開けた三崎は、当たり前のように中へと足を進める。  大学での勉学ではなく、この店の仕事が本業だと言いたかったのかと、三崎の後に続いた。  中に入った俺は、三崎越しにざっと周りを見回した。  バーカウンターの奥には磨き上げられたグラスと、様々な酒瓶が並ぶ。  カウンター6席に、4人座るのですらぎゅうぎゅうであろう狭いボックス席が1つ。  全体的に黒色でまとめられており、小さくシックな大人のバーといった風合いだ。 「お前は20歳超えってコトか。……俺は、呑まないぞ」  飲酒が許されている年齢ではない俺は、あえて〝呑まない〞と告げる。 「君が未成年だってのは、知ってるよ」  ゲイであるコトを突き止めていた時点で、俺に関する粗方の情報は掴んでいるのだろうとは、察していた。  店のキーをカウンターに無造作に置きながら、三崎は言葉を繋ぐ。 「俺は君の3つ上、21。って今さら年上ぶる気もないけどね」  振り返った三崎は、くすりと淫靡な笑みを見せる。  背後のカウンターに両肘を乗せ、背を預けた三崎は、色のある視線で俺を見やる。 「ラブホなんてあからさまな場所、いけないでしょ?」  首を傾げた三崎は、ゆったりとした手つきで、自分のシャツのボタンを解いていく。  ゆるりと三崎に近づき、肌蹴たシャツから覗く肌に指先を滑らせた。 「あのソファーででも、ヤるつもりか?」  ちらりとソファーへと視線を投げる俺に、くすりと笑う三崎の声が響く。 「ベッドなんて必要なくない?」  三崎の長い足が、俺に絡みついてくる。

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