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第46話 存在しない権利

 長い睫が揺れる薄く開いた瞳は、俺の唇に照準を合わせる。  半開きで誘惑してくる赤い唇に、自分のそれを重ねた。 「…………っん」  挨拶程度に、三崎の口腔内を舐め回してやる。  鼻にかかる甘い吐息が、俺の耳を擽る。  肌蹴たシャツの隙間から手を滑り込ませ、しっとりと指先に吸いつくような三崎の肌を堪能する。 「さらっさら……君の手、きもちぃね」  ちゅぱっと唇を放した三崎が、俺の手を取り、するりと頬を寄せた。  肩を露にするようにシャツを剥がし、美味しそうなその肌に、思わず舌舐りした。  口を開け、肩口へと近づけた俺の額が、ぺちりと叩かれた。 「ダメだよ。俺は君のものじゃない。痕を残すのは契約違反……」  甘い恋人関係でもない俺たちは、ただ性欲処理をするだけの間柄で。  肉欲に忠実に、腹に渦巻く欲求を相手にぶつけるだけ。  そこに、所有の証など残しては、ならない。  三崎は、俺のものなどではなくて。  俺にそんな権利は、与えられていないのだ。 「そうだな」  絡みついている三崎の身体を離し、一歩分の距離を取る。  燻る支配欲は、肉欲へと置き換える。  目の前の男を啼かせ、屈服させてやろうと嗜虐の思いが、腹の底を煮立たせる。 「早く脱げよ。挿入れてやるから」  俺の股間で存在を主張するペニスを、ジーンズ越しに撫で上げた。 「そうだね。時間もあまりないしね」  ちらりと壁に掛けられている時計を見やった三崎は、迷いなくベルトを外す。 「あ、これ着けてね」  思い立ったようにスラックスのポケットへと突っ込んだ手は、コンドームを摘まみ出す。 「ぁあ」  受け取ったそれの外装を破きながらも、俺の視線は三崎を炙る。  なんの戸惑いもなく、下着ごとスラックスを脱ぎ始める三崎に、俺は前を寛げ、臨戦態勢のペニスにコンドームを被せた。  期待に満ちた三崎のペニスは、反り返り涎を垂らしていた。  くるりと俺に背を向けた三崎は、バーカウンターに片手をつき、自分で片方の尻たぶを、むにゅりと掴み上げた。 「どうぞ」  ムードもなにもない。  だが、ローションであろう透明な粘液が、こぷりと溢れる孔は、俺の興奮を煽るのに充分な光景だった。  尻たぶを持ち上げている方の三崎の足を掬い上げる。

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