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第48話 純粋な君への興味

「こんなに汗だくにされるとは、思わなかったよ……」  汗に塗れたシャツを摘み、可笑しそうに呟いた三崎に、たっぷりと欲望を溜めたコンドームを外しながら視線を向けた。 「まだ若いし、俺相手ならもっとあっさりイッてくれると思ってたのに……」  甘く見過ぎたか…と、不服げな声で紡いだ三崎は、腰を叩く。  外したコンドームの口を結び、空いている手を三崎へと伸ばした。 「もう一発くらい、ヤっとくか?」  叩かれていた腰を労るように撫でながら、耳許で囁く俺。 「はは…っ。俺のコト、壊す気?」  寄せていた唇が掌で塞がれ、身体を離される。  摘まんでいた使用済みのコンドームは、三崎の手へと渡る。  (たしな)めるような視線を向けた三崎は、スタッフルームに続く扉へと視線を投げる。 「ちょっと着替えてきてもいいかな?」  俺の唇から離した手で、シャツを摘まんだ。 「どうぞ」  近場のカウンターチェアを引く俺に、三崎はスタッフルームへと消えた。  身形を整え、カウンターチェアに腰を据えたところで、三崎がスタッフルームから戻ってきた。 「喉、乾いたでしょ? ジンジャーエール、好き?」  カウンターの向こうで、グラスを片手に三崎が腰を屈める。  氷がグラスに当たり、カランっと小気味良い音が響いた。  身体を起こした三崎の手には、ジンジャーエールのペットボトルと氷の入った細長いグラス。  三崎の動きを目で追いながら、口を開いた。 「お前が欲しいのは、金か? 後ろ楯か?」  プシッと炭酸の弾ける音と共に、三崎の不思議そうな瞳が俺を見やる。 「別に後ろ楯は要らないかな」  まぁ、お金はあっても困らないけど…と、小さく呟き、ははっと小さく笑った三崎は、ゆったりとグラスにジンジャーエールを注ぎながら言葉を繋ぐ。 「こっちが本業だって言ったけど、バーテンじゃないんだ。俺の本業は、事件屋。表には出せないいざこざを片付けるのが仕事なんだよね」  シュワシュワと泡を立ち上らせるグラスが、すっと俺の前に差し出される。  滑らかで靭やかな三崎の動きに、抱いていた時と同じ色気を感じた。 「俺は、裏の世界の住人だからね。スズシロの後ろ楯なんてあっても、使い道ないんだよね」  くすくすと楽しそうに笑いを零した三崎の視線が、俺へと流される。 「……ただ純粋に、君に興味があっただけだよ」  ふわりと細くなり弧を描く瞳は、俺の心を擽る色香を侍らせていた。

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