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第55話 勝機しか見えない先行き

 スズシロの御曹司は、好きでもない相手と政略結婚させられ、不自由で不幸で可哀想なヤツなのだと、泊里は笑う。  土地を安く買い叩かれたコトへの八つ当たりに過ぎないその発言に、小さなヤツだと俺は腹の中で笑っていた。 「君の言ってるコトが全て事実で、政略結婚で、仮面夫婦で、同性愛者だとして、…そんな情報もらって、俺にどう利用しろっていうの?」  金の無心を諦めていないだろう泊里に、利用価値を問い掛ける。  どの事実をマスコミに売ったところで、握り潰されるのがオチだろう。  下手を打てば、俺だって潰されかねない。  そんな泊里の情報に、価値など見出だせるはずもない。  俺の質問に諦めがついたらしい泊里は、腰を上げ、店を後にした。  泊里を追い返した後、ふと思う。  スズシロの御曹司と上手く繋がりが出来れば、事件屋としての俺の太客になるかもしれない。  スズシロが裏社会の大物、比留間と繋がっているのは、誰もが知っている事実だ。  だが、比留間を動かすまでの大きな仕事じゃなければ、俺だって食い込めるかもしれない。  上手く話が転がれば…と俺は、スズシロの御曹司について調べ始めた。  泊里の話に出てきた〝愁実〞という人物の友人関係を探り、佐野や駒井といった者に辿り着いた。  切れ切れではあったが、周りの者たちが語る話を総合的に判断すれば、郭遥と愁実が恋仲であったのだろうと想像するのは容易かった。  泊里のいう郭遥が〝ゲイ〞であるという情報は、あながち間違ってはいなかった。  勉強会を行うためにと借りていたアパートの側で清白の秘書、近江が数度、目撃されている。  生産性のない同性愛という感情を嫌悪している清白の当主の意向により、近江が2人を別れさせたのだろうと推測された。  近江は、比留間と深い繋がりがある。  清白と比留間が結託し、愁実を隠してしまえば、郭遥には捜し出すコトは困難だ。  郭遥は、神楽との結婚に納得していないように見えた。  これは、泊里が言っていた通り、政略結婚で間違いないだろうと踏んだ。  周りからの介入など関係なく、愁実と別れたのであったとしても、俺ならば、郭遥が好む男を紹介できる。  もし、愁実への想いを断ち切れていないのであれば、俺が捜してやるのも(やぶさ)かじゃない。  勝機しか見えない先行きに、頬が緩んだ。

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