60 / 115

第60話 現実となる憂慮

 それから半年後。俺の憂慮が現実となる。  2人目の男の子が、……産まれた。  郭騎を授かった後、俺は精液を渡した覚えはない。  腹が大きくなってきた澪蘭が、2人目が出来たと告げてきた。  どうやって妊娠したのかと問うた俺に、澪蘭は郭騎を授かった時に保存しておいた受精卵だと宣った。  健全な若い女。  妊娠しづらい身体という訳ではなく、そういう行為がなかっただけ。  卵子を取り出すというような身体に負荷のかかる方法を、初めから選択するとは考えにくかった。  怪しいとは思ったが、妊婦である澪蘭にストレスをかけるのは憚られ、俺はその言い訳を無理矢理に飲み込んだ。  天原に掛かりっきりだった三崎と会うのは、久し振りだった。  恋人同士の甘い睦言ではない俺たちの行為は、獣と同じスタイルを取る。  単なる欲求の解消でしかない行為に、愛はなく、俺は後ろからしか三崎を抱かない。 「………はっ、…くっ」  俺の喉の奥から押し出されるのは、恥じらいなど持ち得ない本能のままに貪る雄の呻きだ。  痺れる腰の震えに、薄いゴムの膜の中へと無駄撃ちする。  じわりと熱せられた腹に、きゅぅっと俺を締めつけ、痙攣にも似た震えを起こした三崎の身体から、がくりと力が抜ける。  腰だけを高く上げていた三崎の身体が、ベッドの上で、ぺしゃりと潰れた。  コンドームを残したままに抜けてしまいそうなペニスに、その腰を追い、身体を被せた。  片手で上体を支えながら、挿入(はい)っているペニスを抜こうと、コンドームを押さえた方の手首が、きゅっと掴まれる。 「いつも以上に、上の空だったね?」  目尻が赤く色づき、涙が揺蕩う(なまめ)かしい瞳が、俺を振り返った。 「……そうか?」 (しら)を切ろうと、淫靡に見える三崎の瞳から逃れるように、視線を股間へと向ける。  三崎に掴まれたままの手で、外れそうになるコンドームを押さえつつ、腰を引く。 「………ぁ、………ん……」  ずるずると引き摺り出すペニスに、刺激された襞が名残惜しげに絡みつく。  ぞわりと走る痺れに、三崎の手が俺を解放する。  ぐちゅりと粘っこい音を立て、抜け出たペニス。  食むものを失った孔が、元の形状に戻ろうと足掻き、ゆるゆると開閉を繰り返す。

ともだちにシェアしよう!