61 / 115

第61話 俺の前では素直でいなよ

 使用済みのコンドームの口を縛り、適当に放った。 「足りなかったのか?」  三崎のアナルが、くぱっと緩んだ瞬間を狙い、指を3本まとめて捩じ込んだ。 「ひ、ぁ…………ん…」  弄られると思っていなかった三崎は、予想外の刺激に、可愛い声で啼く。  快感に反る背に、ぴったりと身体を重ねた。 「俺の指でよければ、思う存分しゃぶれよ……」  耳許で低く囁く俺に、振り返った三崎が、唇に歯を立てる。 「……ぃっ」  甘噛みなどという生易しい接触ではなく、俺を追い払うための本気の喰らいつきだ。  逃げを打つ俺の顔を、三崎の不満げな瞳が睨めてくる。 「………っん…」  飲み込まれたままの指先も、ぐちりと音を立て、強引に引き摺り出された。  身体を返し上体を起こして、ベッドの上に座り込んだ三崎は、不服げな顔のままに俺を見やる。 「何かはわからないけど…、ずっと、なんか引っ掛かってるでしょ?」  三崎の指先が、俺の鳩尾から鎖骨にかけ、つぅっと這い上がる。 「気になるコトがあるなら、吐いちゃいなよ」  するりと寄った三崎の顔。  噛みついた場所を癒すように、三崎の舌が、ぺろりと舐めていった。 「誤魔化さなくて、いいよ。俺の前では素直でいなよ」  離れた三崎の顔は、いつもの笑顔に戻っていた。 「お前には隠せないな」  ははっと空笑う俺に三崎は、ふっと笑いにも似た吐息を零す。  所在なさげに転がる使用済みのコンドームを拾い、ティッシュと一緒に丸める。 「2人目が産まれた。……あれはたぶん、俺の子じゃない」  重く伸しかかる空気と共に、ぎゅっと握ったティッシュをゴミ箱へと放った。 「DNA、調べてあげようか? ツテはあるよ」  セックスの余韻を残す赤みが広がる肌を曝しながら、こてんと首を傾げてくる三崎は色気を侍らせる。 「そうだな……」  はっきりとした事実がわかれば、俺の気も多少は、すっきりとするだろう。

ともだちにシェアしよう!