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第63話 マダムの飾り <Side 三崎
預かった検体の結果は、デスクの引き出しの奥底へとしまい込んだ。
勿論、結果は見ていない。
いくら愛のない結婚だとしても、なんの繋がりもない子供を育てさせられるのは、郭遥でも我慢ならないだろう。
だけど、郭遥はスズシロの跡取りだ。
世間体を気にする家柄である清白家が、離婚など許すはずもない。
相手の不貞が原因だとしても、それすらも郭遥に甲斐性がないせいだと言われかねない。
それならばと、事実を知るコトを先送りにしたのだろう。
それから4年の月日が流れた。
直を拾った2年後には、あのボロアパートは取り壊されてしまった。
このアパートに居なくては、母親が帰ってきたときに困るだろうと丸め込み、金を立て替える代わりに仕事を手伝えと、この世界に、直を引っ張り込んだ。
アパートが無くなるからと放り出すのは不憫に思え、直を連れて新居へと引っ越した。
近頃では、仕事が板についてきていた直。
拾った頃は、180センチ近い俺より小さかったのに、今ではすっかり追い抜かれ、こちらが視線を上げなくてはならない。
こんな仕事をしているせいか、厳 つい顔ばかりしている直は、190近い身長とチンピラのような風貌で、周りから怖がられている。
大人へと成長していく過程で、がたいも良くなった直に、ボディガード関係の仕事は任せるようになっていた。
俺とは別の仕事で出ていた直が、2日ぶりに帰宅した。
「なしたの?」
ソファーに座りながら、脹ら脛 を揉む俺に、直の不思議そうな声がかかった。
「おかえり。…昨日、マダムとデートだったんだ」
デートの相手、宝石商のマダムは、レディのパーティで知り合った俺を懇意にしてくれている1人だ。
このマダムは、俺をアクセサリーのひとつくらいにしか見ていない。
それなりの形貌 の男と連れ立って歩き、優越感に浸りたいだけなのだ。
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