苦しげに歪んだままの眉で、切なげに俺を見詰める愁実の瞳に、ぶわりと涙が浮かんでくる。 　はっと逃がす息に、噛んでいたシャツがはらりと落ちる。 「イカ、せて……っ」 　詰まるように放たれた声と、白くなるほど握られた手が、愁実の焦燥を物語る。 　堪え性のなさは、昔と変わらない。 　俺の右手の中には、ドクドクと脈打つ欲情の証が握られている。 　〝好きだ〞なんて伝えられたところで、困るだけ。 　愁実の中にあった俺への想いは、年月と共に薄れて失せた。 　今はただ、腹に渦巻く熱を吐き出したいと、愁実の身体は淫らに揺らぐ。 　催眠術だろうが、マインドコントロールだろうが、手段を選ばなければものに出来るというのならば、それもありかとすら思えてしまう。 　だが、それほどに心酔していようとも、俺の願いは叶わない。 　なにもかにもを手に入れられる俺でも、どうにもならない…、心だけは操れない。 　……たとえ、操った感情を手中に収めたところで、俺は満足など出来やしない。 　そんな偽物の感情では、虚しさが膨らみ、俺の心は潰れてしまうコトだろう。 　期待した言葉を紡いではくれそうもない唇に、噛みつくようなキスを見舞う。 　親指と薬指でペニスをきゅっと締めつけたまま、人差し指と中指をぬるぬると亀頭の上に滑らせた。 「ぁ、……あぁ、ぁ……んんっ、…」 　ぐちぐちと粘っこい音を立てる唇と股間。 　愁実は堪らないというように、びくびくと身体を燻らせる。 　唇を離し、溺れそうなほどに唾液を溜める口腔内に左手の親指を突っ込んだ。 　押さえつける舌に、指を伝い涎が滴る。 「俺の身体、そんなに美味しそうか？」 　ご馳走を前に涎を垂らす獣に見立て問うてやれば、解放されたいがためだけに、押さえつけている俺の指に愁実の舌が媚びてくる。 　ぼろぼろと泣きながら、必死に媚びてくる姿が、いやらしくて堪らない。 　余計に、愁実の心は俺のものではないのだと痛感し、腹が煮えた。 　ずるりと抜き去った親指と唇の間に、銀色の糸が垂れる。 　ぷつりと切れた糸に、惚(ほう)けた瞳で俺を見やる愁実が口を開いた。 「もう、挿入(い)れてくれよ。オレん中、郭遥ので、いっぱいにして………」 　ぺろりと真っ赤な舌で唇を舐めた愁実は、俺の股間に脛から足首までを撫でつけ、いれてくれと強情ってくる。 　愁実の場馴れした雰囲気に、ちりちりと心が逆立った。