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第101話 もっと早く……
愁実が出演していたゲイビデオは、どんなにハードなプレイが収録されていようとも、最後にはセックスで締められていた。
何人の男と身体を重ねてきたのかと考えるだけで、おかしくなりそうだった。
そこに、感情がなくとも、この身体に触れた男がいると思うだけで、発狂しそうになる。
もっと早く、捜していれば。
もっと早く、調べていれば。
もっと早く、察していれば。
後悔したところで、取り戻せるものじゃない。
わかっているのに、もやもやとした苛立ちが心を掻き乱す。
苛立ちを振り落とすように頭を振るい、スラックスの前を寛げる。
もう既に臨戦態勢のペニスを下着から引き摺り出した。
愁実の右の腿を粗雑に掬い上げ、俺の腰周りに絡ませた。
足から離した手で尻を掴み、下から腰を重ねていく。
アナルの表面をぬるりと撫で滑った亀頭に、ぞわりとした快感が背を撫でていく。
立ったままで正面から抱くのは、難儀だと感じたが、後背位に移行する気など更々ない。
ただ欲情のままに貪り喰らうだけの、肉欲に支配されたセックスだとしても、愁実を相手に、獣に堕ちるつもりはない。
刺激に蠢き出したアナルが、きゅうっと竿に吸いついてきた。
背伸びをするように片足で爪先立ちした愁実は、早く咥えたいと言わんばかりに、腰を突き出し、乗り上げてくる。
角度をつけ加えた力に、ぐにゅりとした反発を伴いながら俺のペニスが喰われていく。
「あ、ん………」
鼻にかかる甘い呻きを漏らしながら、身体を燻らせる愁実は、じわじわと俺のペニスを飲み込んでいく。
「……ぁ、…は、ぁあ………」
ぐぷんっと先端の膨らみが飲み込まれた瞬間、愁実の身体がぶるりと震え、きゅうっと締め上げてくる。
戒めたままのペニスからは、先走りの粘液だけが、こぷりと溢れる。
「ドライとはな……、上手にイクもんだな」
俺ではない誰かに教えられたであろうイキ方に、ぞわりとした黒い感情が心を波立たせる。
下から突き上げるように揺すり、じわじわと俺の肉棒を飲み込ませた。
「ん……ま、はっあぁ……っ」
抜け出せない絶頂の渦の中で、痙攣し媚びてくる襞が、俺のペニスを締めつける。
与えられ続ける有り余る快感は、一種の拷問だ。
飛びそうになる意識を必死に繋ぎ止めながら身体を仰け反らせ、どうにか快感を逃がそうとしたところで追い討ちをかけるように与えられる刺激に、愁実の瞳からぼろりと大粒の涙が溢れる。
堰を切ってしまった涙は、次々に流れ落ち愁実の頬を濡らしていった。
苦しそうに引き攣る呼吸音が、俺の嗜虐心を刺激する。
「お前の涙は、人を狂わせる………」
これほどまでに蠱惑的な涙を流す人間を、俺は知らない。
不思議そうに呟かれた〝評判が良いらしい〞という愁実の言葉を、俺は当たり前だと感じていた。
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