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第111話 見えていたはずの結末 <Side 三崎
「どういう使われ方をするのか知りたいかと思ってな」
郭遥の楽しげな声が、鼓膜を震わせる。
俺が押し付けた土地の利用用途を伝えるために電話をしてきた郭遥に、くすりと笑った。
「律儀だね」
あの場所は、〝JOUR〞という名の秘密倶楽部になるらしい。
準備も順調で、あと数ヶ月もすれば開店だ。
「どう? 直、ちゃんとやれてる?」
ふと、直のコトが気にかかり、問うていた。
1年前、愁実を救い出してほしいと依頼されたが、2年のブランクに不安を感じた俺は、直を紹介した。
郭遥は、その件をきっかけに小さな仕事は直に依頼するようになっていた。
「ぁあ。この前、可愛いコを連れてきたから、JOUR で働かないかって誘ったら、天原に威嚇されたよ」
ははっと快活な笑いが、電話越しに聞こえた。
たぶん、郭遥の示す〝可愛いコ〞は、浅岡 明琉 のコトだろう。
先日、直が若そうな青年を連れ、俺の経営する店のひとつであるキャバクラに顔を出した。
店のキャスト、陽葵 が呼んだらしかった。
少し前、陽葵に付き纏っているストーカー男を退治してほしいと直に依頼した。
直は、成り行きで陽葵のボディガードをしていた青年が犯人だと誤解し、犯してしまったらしい。
その青年が、明琉だった。
俺の姿を確認した直が、ボックス席に2人を残し、挨拶に来る。
人違いで傷物にしてしまった以上、放っておけなくなり、面倒を見る羽目になってしまったと、満更でもない顔で俺に愚痴を言い、明琉の元へと戻っていく。
あれほどまでに熱く滾るものを抱えていた直の瞳から、温度が失せていくのを感じていた。
最近では、俺を見やる直の瞳に、微塵の熱も感じられなくなっていた。
その瞳に浮かぶのは、恩義や憧憬の色合いだけ。
瞳の奥で燻っていた熱は、俺ではなく、明琉へと向いている。
……知っていた。
永遠なんて、存在しないコト。
〝好きだ〞という感情は、簡単に移ろうものだというコト。
陽葵と明琉、直の3人で楽しそうに話す姿を遠巻きに眺める俺。
明琉の頭をくしゃくしゃと掻き混ぜるあの手は俺のものだったはずなのに…、などと馬鹿げたコトを考えてしまったのも事実だ。
自分から遠ざけておきながら、届かなくなった存在に、未練が燻っていた。
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