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第31話

翌朝、昨日のSNSが気になり城戸さんに会いに喫茶店を覗いた。 モーニングをやっていた喫茶店には城戸さんと客が数人いた。 城戸さんは俺に向かっていってらっしゃいと手を振っていた。 安心して城戸さんに手を振り学校に向かうため歩き出した。 初めてではないだろうか、凪沙がももちゃんと呼ばないのは… 何を企んでいるのか、とても不気味に思えた。 学校に到着して教室の近くまで行くと盛り上がっている声が聞こえて足を止めた。 行きたくない…でも、行かないと遅刻してしまう。 深呼吸をして早く入って椅子に座れば大丈夫だと思った。 裏方だと楽だったんだが、きっとこの盛り上がりは演劇関連だから… 他のクラスの生徒も覗く教室の中に入った。 「キャー!!凪沙くんカッコイイ!」 「……そう?」 「本物の王子様みたい!!」 女子のテンションが異常に高く、凪沙のテンションが異常に低い。 早速演劇部から衣装を借りたのか着ていた。 側にあるピンクのドレスはもしかして……いや、考えるのやめよう。 やっぱり俺からみたら凪沙は軽い感じの王子に見えた。 俺からしたら会長こそ本物の王子に思えた。 すぐに席に着こうと思っていたのにまじまじ見てしまった。 ふと凪沙の唇に視線がいき、すぐに目を逸らし席に着き顔を伏せる。 …なに思い出してるんだ、あんなの…犬に噛まれたようなものだ…凪沙のおふざけに過ぎない。 「おはよう!和音!」 「………」 「和音?」 あんなのファーストキスに入らない。 凪沙にとって何でもない事だ…勿論自分にとっても… ひんやりと冷たい手が首に触れて、短い悲鳴をあげて勢いよく顔を上げた。 包帯越しでも冷たい感触は伝わってきた。 そこには驚いている風太がいた。 …近くに来ていた事に全然知らなかった。 「ご、ごめん…まだ包帯してるから痛かった?」 「あ、いや…冷たかっただけ…俺の方こそいきなりごめん」 包帯は今朝自分でまた巻いた、今度は凪沙に取られないように結び目をしっかり結んどいた。 風太に心配掛けてしまい、気まずくなった。 この痣はいつ消えるのだろうか、呪いのように心も身体も締め付ける。 キスマークは少し薄れてきたが噛み跡はまだくっきりと残っていた。 一生消えないもののようで怖かった。 包帯に触れる俺を後ろからジッと見つめる凪沙の視線に気付かなかった。 「そ、そういえば和音が劇のヒロインなんだっけ?」 「…うん」 話題を変えようとしてくれたが俺が気まずい空気を作ってしまう。 せっかく風太が声を掛けてくれたのに… 下を向いて目元が熱くなる、自分がどうしようもなくて上手く伝わらなくて…泣きそうになる。 風太はそんな俺に気付いてまだ盛り上がってる生徒達に声を掛けた。 何を言うつもりなのかと俺は顔を上げて風太を見た。

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