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第9話※
※微性描写ありです。
そしてカウントダウンが始まった。
ゆっくり数えられるカウントダウンが恐怖で耳を塞ぎたくなる。
とりあえず廊下を走った。
途中で「廊下を走ってはいけません!」というポスターが目に入ったが気にしてる場合じゃない。
静かな廊下に足音が響く。
もうだいたいの生徒が部活や帰宅している時間だから廊下には不気味なほど人が一人もいなかった。
とりあえず何処かに隠れようと、階段を降りてキョロキョロと見ると空き教室が見えた。
もう10数え終わった頃だろう、迷ってる暇はなく空き教室の中に入った。
そしてドアを開けたところで、中には入らず固まった。
驚く俺の腕を引っ張り空き教室の中に引き込まれた。
後ろでドアが閉まる音を聞いた。
何年使ってないのか、少々埃っぽい床に眉を潜める。
引っ張った相手を睨むが、相手は壁に耳を近付けてなにかしている。
「…何、してるの?」
「シッ!今いいところなんだから」
黒いボサボサ頭にメガネにだらしなく制服を着ていて、失礼だが小汚い印象を持つ男がそこにいた。
先輩だろうか、無駄に長身で足がモデルみたいに長いから見た目と違和感がある。
ちょっとかくれんぼを忘れて気になった。
聞いても答えてくれないみたいだが、気になり男の真似をして壁に耳を近付けてみた。
確かこの壁の向こうは生徒指導室だっけ?
何やら物音が聞こえる、誰かいるのだろうか。
『あっ!んっんぅ、もっとぉ』
「!?」
驚いてバッと壁から離れる。
いくら鈍くても今のは何してるか分かる。
甘い声が耳から離れない。
顔を赤くして男を見る。
それを男がニヤニヤした顔で見る。
…なんだ?今のは、まさか…
「ピュアだねぇ、この程度でビックリするなんて」
「なっ、なな何してんの!?」
「生徒指導室でえっろい事してんの、今日は数学の細川 だね」
数学の細川って確か厳しい先生だって噂になってた先生だ。
そんな先生がこんなところで…しかも多分、相手は生徒のような気がする。
見てはいけないもののように感じてすぐに空き教室から出ようとするが、足音が聞こえてかくれんぼを思い出しとっさに男の後ろに隠れる。
男はよく分からず「何?何?」と言っていたが、此処で声なんて出したら一発でバレるから黙る。
やがて足音が遠のき、気付かれてない事にホッとした。
…なんだ、やっぱり今までかくれんぼで見つかったのは偶然で見つけられないじゃないか。
男の後ろから出るのと同時に甲高い声が響いたら。
『あっあぁぁぁっっ!!!!!』
「フィニッシュ!」
何だか男は嬉しそうにそう言うが俺は顔を赤くして縮こまり下を向いた。
こういうのに慣れてなくてどうしたらいいか戸惑う。
普通の男子高校生よりは性欲は薄いし、自慰も時々しかしない。
エッチな本や動画なんかも見ないから童貞丸出しの反応しか出来ない。
男は興味が失せたのか壁から離れて、使われてない机に座る。
まだ近くに凪沙がいるかもしれないからしばらくは外に出れない。
「なんで、こんな事…怒られるよ?」
「大丈夫大丈夫!まさか隣の空き教室に誰かいるとか思わないでしょ」
「…で、でも」
「桃宮には了承済みだから大丈夫だよ」
桃宮…その名前を聞き驚いた。
その名前はつい昼頃風太から聞いたばかりだった。
まさか隣で教師と淫らな行為をしてるのが俺と同じ苗字の桃宮とは思わなかった。
それにしても桃宮って女の子だったのか…勝手に同性かと思ってた。
彼はその桃宮さんと知り合いなのだろうか、じゃないと許可なんて取れない。
それに桃宮さんは良いのだろうか、愛し合ってる声を他人に聞かれて…しかも部外者まで聞いてしまって申し訳ない。
「お、女の子にそんな許可を取っちゃ…ダメだと思います」
「え…桃宮は男だけど」
「え?」
「え?」
お互い見つめて首を傾げた。
おとこのこ?
だって、細川先生とそういう行為をしてるって…
目が点になる俺に気付き男は「あー」と一人納得していた。
男同士のそういう行為を知らない俺は分からなかった。
今までそういう話をする友人がいなかったから当然と言われたら当然なのかもしれない。
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