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第13話

※桃宮和音視点 満天の青空に照らされながら憂鬱な気分で学園に向かう。 自然と一歩一歩が重く感じる。 昨日今日でどんな顔をして凪沙に会えばいいか分からない。 トボトボと歩いているとバンッと背中を叩かれた。 なんか昨日も同じことがあったような… ヒリヒリする背中を擦り後ろを見る。 「おっはよ!和音!」 「…おはよう風太」 いつも明るい風太が眩しくて目を瞑る。 昨日の事を気を使ってくれてるんだろうが、それを感じさせない自然な風太がキラキラと眩しく感じる。 ニコニコする風太を見ていて隣に誰かがいる事に気付いた。 黒髪眼鏡の少年で、やや疲れてるようなげっそりとした顔をしていた。 クラスでは見た事がないから違うクラスの人だろうと考える。 黒髪眼鏡の少年は重いため息を吐いた。 「風太、その人は?」 「あぁ!コイツは僕の幼馴染みの松田(まつだ):椿:(つばき)、さっき一緒になったから連れてきた!」 「…いい迷惑だ」 椿と呼ばれた少年は本当に嫌な顔をしていて少し怖く感じた。 …けど、風太の友達なら大丈夫だと言い聞かせる。 凪沙みたいなのは稀だから怯えてたら何も始まらない。 椿くんに向かって手を差し伸ばす。 風太の友達なら友達になってくれるだろうか、ドキドキする。 風太も紹介するから二人を見守っていた。 「は、初めまして…桃宮和音です」 「……桃宮?」 椿くんは顔をしかめてこちらを見ている。 なにかしただろうかと考えるが、初めて会ったから何も思いつかない。 握られる事のない手をそのまま降ろす。 やっぱりこんな暗い奴と友達になりたくないよね。 悲しくなるが、仕方ないと何処か諦めていた。 風太が椿くんの脇腹を肘でつき椿くんは風太を睨む。 「僕の友達にそんな態度取らないでよ」 「お前、こんなのと友達なのか?」 椿は軽蔑した顔でこちらを見る。 昔虐められていた事を思い出し、気付いたらその場を逃げ出していた。 あの瞳は小学校の頃、皆が俺を見る目そっくりで怖かった。 ……やっぱり変わるなんて無理なのかな。 風太の声を遠くで聞きながら学園とは反対方向に走り出す。 残された風太は椿くんをジロリと睨む。 「後で和音に謝ってよ」 「…断る、俺はアイツと中学一緒だから知ってるけど男好きで毎日違う男と抱き合ってるって噂があったんだよ」 「そんなわけないじゃん!噂は噂だよ!」 「ただでさえ同じクラスなんだから、友達になんかなりたくないな…俺は女の子がいい」 「和音は僕と同じクラスだよ」 「は?」 「へ?」 ーーー 息が苦しくなり、足を止めた。 アパートの前まで帰ってきてしまい、罪悪感で部屋には入らずアパート前をウロウロする。 どうしよう、学校サボっちゃった。 遅刻でもいいから今から行こうかな?と考えていたら声が聞こえた。 声はアパートの裏庭から聞こえてこっそりと覗く。 そこには城戸さんの姿があった。 すぐに城戸さんの前に行こうとするが、いつも優しい城戸さんとは違い眉を寄せて怒ってる顔だから足を踏み出す事はなかった。 「いい加減にしてくれ!お前には付き合ってられない」 どうやら電話をしているらしい。 あの温厚な城戸さんを怒らせる相手、いったい誰なんだろう。 聞いちゃいけないって分かってはいるが、気になってしまい足が動かなくなる。 城戸さんはアパートの壁に寄りかかる。 下を向き表情が分からなくなる。 でも、声が…体が…とても震えている。 「もう別れよう、そうすればお前も自由だ」 どうやら恋人と電話をしているらしく、冷たく言っているが本人は恋人の事をまだ好きなのか悲しそうな感じがした。 これで終わりなのかと思ったが、まだ言い争いをしていた。 和音はこれ以上はダメだと思いそっとその場を後にした。 恋人が居た事ない俺には何故城戸さんがこんなに怯えているのか分からなかった。 きっと大人にはいろいろあるのだろう。 歩きながら時間を見るとため息が出る。 「はぁ、ダメだな…俺」 「なにか悩みがあるなら聞くよ?ももちゃん」 ピタッと歩く足を止めた。 俺をももちゃんだと言う人物なんて一人しか知らず恐る恐る後ろを振り返る。 凪沙が涼しげな顔をして立っていた。 凪沙は堂々とサボっている。 こんな罪悪感がないサボり方をしてる人初めて見た…不良でもないのに 見なかった事にして歩き出すと凪沙も着いてくる足音が聞こえた。

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