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第14話

「どこ行くの?」 「が、学園に決まってる!」 「サボらないの?せっかく一緒にサボろうと思ったのに」 やっぱりサボるのは良くないし、それを気付かせてくれた凪沙に感謝する。 絶対に凪沙と過ごしたくないから… 凪沙はそれでも楽しそうだった。 俺は後ろに凪沙がいるだけで恐怖だというのに… 嫌いな相手と一緒にいたいものだろうか。 凪沙の考えが分からない、きっと誰も分からないだろうけど… 「つ、ついてこないで…」 「俺も学園に行くから同じだね」 うっ…それは確かに…同じだけど… いつもと違う遠回りをしようか迷うが、着いてこられても困るし…自意識過剰ではなく、凪沙なら本当に着いてきそうだから早く学園に行きたい。 しかしいくら早歩きしても凪沙との距離が遠くならない。 近くも遠くもない微妙な距離をキープしている。 クラスは同じだけど席が離れてるのが唯一の救いだ。 席が近かったら凪沙の視線に堪えきれず不登校になるところだった。 「ねぇ、ももちゃん」 「………」 さっきはつい反応しちゃったけど、ももちゃんじゃないから無視しようとしていると凪沙は勝手に話し出した。 凪沙も返事なんて期待してないのだろう。 後ろから着いてくる凪沙の表情は分からないが背中がピリピリする視線を送られて顔を青くする。 何を言われるのか、怖かった。 普通の人なら凪沙の低く耳障りがいい美しい声にうっとりするんだろうが、俺にとっては悪魔の囁きに聞こえる。 凪沙の言葉一つ一つがずっしりと重い感じがして悪寒が走った。 「隣のクラスに桃宮って奴がいるって昨日言ってたでしょ」 そういえば風太が言ってたな、そして生徒指導室でのアレを聞いてしまい下を凪沙に見えないように下を向き思い出し顔を赤くする。 桃宮の顔は知らないが、あまりその話題はしたくない。 忘れようと思ってたんだ、相手も忘れてほしいだろうし… 凪沙はその事を知らず俺をジッと見ていた。 その瞳が仄暗く俺を写していた事に下を向いていた俺は気付いていなかった。 何でもないように口を開いた。 「昼休み、会いに行こうかと思ってね」 「…え?」 つい立ち止まり後ろを振り返ってしまい、凪沙は嬉しそうにこちらを見ていた。 やっと見てくれたと口には出さないがそういう顔をしていた。 振り返ったのは興味ない感じだったのに意外だなと思っただけ… もしかして桃宮がももちゃんと思い始めたのだろうか、それならいいけど… 再び歩き出すと凪沙も着いてくる。 学園まで一緒に登校するつもりだろうか、こんな事誰かに見られたらと思うとゾッとする。 凪沙の周りにいる人達は派手な人が多いから地味な俺と一緒にいたとなると…想像しただけで怖い。 「安心してよ、隣のクラスの桃宮はももちゃんじゃないから」 安心出来ない…いっそ隣のクラスの桃宮がももちゃんだったら安心出来る…隣のクラスの桃宮には悪いけど… こんな平凡顔、何処でもいるのに何故こうも自信満々で言えるのだろうか。 凪沙から俺はどう見えてるのか聞いてみたい気がするが、聞くのが怖くもある。 …俺は凪沙から誤魔化し抜けるのだろうか。 何も答えない俺に凪沙は心の底から冷えるような冷たい声を出して呟いた。 その声は俺の知らない凪沙だった。 「…ももちゃんと同じ苗字とか、本当にムカつく」 「……?」 独り言の小さな声だったからよく聞こえなかったが、聞き返したくなくて口を閉ざす。 俺には関係ない…そう自分に言い聞かせた。 そろそろ学園が見えてきた。 それから俺と凪沙は一言も喋らなかった。 けど、ずっと凪沙の視線が全身を縛り付けるように俺を苦しめていく。 凪沙から解放される日が来るのだろうか。 ーーー 「和音、椿がほんとーにごめん!」 「…もう気にしてないから大丈夫だよ」 教室は授業だったから終わる頃に教室に入り、担任に怒られるかと思ったが担任は凪沙の顔をチラッと見るだけで何も言わなかった。 不思議に思い首を傾げているとすぐに凪沙の周りに人だかりが出来ていた。 そして俺には風太が駆け寄り謝った。 風太はきっと椿くんの言葉に俺がショックを受けたと勘違いしているのだろう。 …言葉よりも椿くんの視線が俺は怖かった。 昔のトラウマを刺激されたようで、本当に怖かった。 すると教室に椿くんが入ってきた。 俺達を見つけると気まずそうな顔をしている。

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