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第15話
「…あ、その…すまなかった、俺のクラスにも桃宮って奴がいて」
「え…あ、ううん…気にしてないから」
「本当に悪かった」
椿くんは本気で謝ってくれて、俺はもう平気だった。
正直凪沙に気を取られていて椿くんの事は気にならなくなっていた。
やっぱり一番怖いのは凪沙だと改めて思った。
すると今度は椿くんから手を差し伸ばされて、さっきは出来なかった握手をする。
これで仲直りだと風太は喜んだ。
暖かな手の温もりに安心する。
「じゃあ仲直りしたところで、昼飯は三人で食堂に行こう!」
「は?俺は予習が…」
「椿は勉強ばかりしてるからガリ勉椿って言われるんだよ」
「そう言ってるのはお前だけだ!」
何だか楽しそうに会話する二人が羨ましかった。
幼馴染みか…普通の幼馴染みはこんな感じなんだろう。
凪沙が異常なだけだよね。
そして短い休み時間は終わり、椿くんは隣のクラスに帰っていった。
ーーー
※白川凪沙視点
昼休みになり、隣のクラスの桃宮に会いに行こうと立ち上がった。
休み時間に教室に来ていた眼鏡の男はももちゃんと握手した事は許さないけど、岸風太ほどベタベタしていないからとりあえず無害だろう。
ももちゃんが教室を出るのを見送り、自分も教室を出た。
隣のクラスに行き適当な奴に声を掛けて桃宮を呼び出してもらう。
桃宮に声を掛けてる奴をジッと見る。
…アレがももちゃんと同じ苗字の奴?似てなさすぎて笑う。
顔は年上受けしそうな幼い顔立ちなのに色気もある。
それが俺にとって反吐がでる容姿だった。
あの純真無垢なももちゃんと比べるのはあまりにもももちゃんに失礼なほど、隣のクラスの桃宮は汚れていた。
これ以上桃宮を見たくなくて一言二言だけ話してその場を離れた。
あぁ、ももちゃんに会いたい。
「あっ!凪沙!こんなところにいた!」
「……お前じゃない」
「…?」
ももちゃんは食堂に向かったから自分も行こうとしたら邪魔な女がやって来た。
適当に付き合ってるだけだし、今は本物のももちゃんがいるから無視すると腕に絡みついてくる。
蛇みたいで気持ち悪かった。
コイツを連れて食堂に行くと変に目立ちそうだし、別れるといろいろと面倒な事になるから仕方なく教室に戻る。
イヤホンを耳に付けると「何の曲?」と聞いてから、自分の唇に人差し指をつけて「シッ」てやると黙った。
単純な頭で助かった。
…雑音でももちゃんの声が聞こえなくなるのだけは嫌だ。
音を聞き逃さないように耳をすませる。
ももちゃんだけの声でいいのにももちゃんの周りも雑音だらけだ。
イライラする…中学までももちゃんの周りを排除してきたのに…
会える嬉しさで大事な事を忘れるなんて…
まぁいい…ゆっくりゆっくりこちらに引きずり込めばいいのだから…
「…ふふ」
「何〜?なんかいい事あった?」
「………別に」
ーーー
※桃宮和音視点
三人で初めて食堂にやってきた。
人がいっぱいいて戸惑う。
あまり人気が多いところは慣れない。
椿くんは一度来たのか、慣れたようにスタスタと歩くから俺と風太は着いて行く。
空いてる三人用の丸テーブルに行き椅子に座る。
何だがこうして友人とテーブルに向かい合う事なんてなかったから変に緊張する。
「…で、どうするの?」
「俺も初めてだから分からないよ」
「この呼び出しボタンでウェイターを呼んで注文するんだよ」
俺と風太が内緒話をしていたら椿くんが呆れたため息を吐いた。
レストランみたいだなぁと思いながらメニューを見た。
メニューは庶民的なものから高級なものまである。
…値段は見なかった事にする。
やっぱり親しみやすい洋食がいいだろうか。
風太はもう決めたのかメニューを閉じた。
「僕はオムライスにしようかな」
「じゃあ俺はハンバーグとエビフライにするね」
「……ガキみたいだな、お前ら」
椿くんにバカにされ風太は頬を膨らませた。
そんな椿くんはカツ丼にしてウェイターを呼ぶ。
オムライスもハンバーグも美味しいよ?と思いながら待つ。
ガヤガヤと食堂は人が沢山いた。
でも食べる事とは別の目的がある人がほとんどのように思えた。
注文した料理が来て食べていて、椿くんは食べながら勉強していた。
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