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第17話※

※微性描写ありです。 「じゃあちょっと付き合って」 ニコッと笑われると断る事を許されない雰囲気で頷いた。 そして着いていくままにやって来たのは空き教室だった。 ドアを開ける生徒会長を見て何の用か不思議だったけど黙って生徒会長に続き空き教室に入る。 入りなりすぐに壁に耳を当てている。 …そういう事をする人を俺は知っているが生徒会長とどうしても当てはまらない。 だってあの人は、だらしがない制服の着方をしていて髪もボサボサで綺麗な見た目の生徒会長とかすりもしない。 生徒会長は不機嫌そうに舌打ちする。 「ど、どうしたんですか?」 「…今日はソロプレイか、つまらない」 何だかよく分からないがすぐに興味がなくなったのか壁から離れる。 まさか壁の向こうには昨日みたいな事が起こってる?勇気がなくて確認出来ない。 ずっと俺は不安げな顔をして使われてない机に座る生徒会長を見ていた。 生徒会長も気付いたのか、驚いた顔をしている。 何故生徒会長も驚くのか分からない。 しかし驚いた顔も美しいとは、美形はいろいろと得だ…俺がやったら間抜けだろうなとボーッと考える。 「え…まさか、まだ思い出せないの?一緒に桃宮の声を聞いた仲なのに」 それは覚えてる、なんせ俺の人生の中で凪沙の次に衝撃的な出来事だったから… しかし、やはり合わない…どっちが本当の彼だろうか。 …きっと、どっちも本当の彼なのだろう。 まさか生徒会長が生徒の行為を聞いているなんて誰が思うだろうか、俺も実際に見ないと信じなかっただろう。 生徒会長は前髪を弄っていた。 あの格好に意味があったのだろうか。 「なんか、雰囲気違いますね」 「ん?まぁあんな格好で会長は出来ないしね、本当は外見を気にしない服の方が好きなんだけどね」 外見を気にしない服…いや、あれは気にしなさすぎるだろと言いたいが、生徒会長だと分かると口ごもってしまう。 とりあえず彼が何故俺を知ってたか分かって一先ず安心した。 そして俺と桃宮の声を聞くためだけに呼んだようだ。 聞きたくはないが生徒会長は変な仲間意識を持った様子だった。 しかし、今日は相手がいないらしく桃宮が一人で自慰しているようだった。 生徒会長は興味がなくなり帰ろうとすると桃宮の声が壁に耳を当てなくても聞こえるほど大きな声を出した。 「あっ!あん!あぁぁっ…な、ぎさくっんっ」 そしてそのままイったのか声は聞こえなくなった。 再び空き教室は静まり返った。 聞き間違いだろう、実際喘ぎで聞こえづらかったし… そう思ってる筈なのに体は震えてしまう。 ここまで来るともう凪沙恐怖症の病気だ。 しかし俺の疑問を生徒会長が確信した。 「…なぎさくん?」 やはり生徒会長も同じ言葉が聞こえたようだ。 なぎさといえば俺の知る限り凪沙しか知らない。 しかし何故凪沙を呼んだのだろうか。 そういえば凪沙は今日桃宮に会いにいくと言っていた事を思い出す。 まさか隣に凪沙がいるのかと顔色が悪くなる。 そんな事は知らない生徒会長は呑気に考える。 「なぎさくんってあの噂のなぎさくんかな?」 「…う、噂?」 「一年なのに知らない?超美形の新入生だよ、有能みたいだから是非生徒会にほしいな」 やはり生徒会長が言ってるのはあの凪沙の事だろう、先輩達にも噂になってるなんて… 凪沙は何処でも話題になるんだな。 生徒会長は再び壁に耳を当てて離す。 …隣に凪沙がいるなら鉢合わせを避けるためにしばらく出れない。 そう思ってたら生徒会長はさっさと教室を出るから、一人でここにいるともっと怖くなり着いて行く。 空き教室を出たら生徒会長が小さくため息を吐いた。 「噂の凪沙くんがいたらヤるかと思ったけど、本当に一人みたいでがっかり」 「…そ、そうなんですか」 生徒会長は残念なため息を吐いたが和音はホッとしたため息を吐いた。 良かった、いないなら鉢合わせする心配もない。 それを生徒会長はジッと見ている。 なにか言いたそうな生徒会長の視線に気付き首を傾げる。 この人は悪い人ではないんだろうけど、凪沙同様に何考えてるか分からない。 初対面からそうだ、あんな場面を見られて追い返せば良かったのに何故俺を空き教室に引っ張ったのだろうか。 謎が深まるばかりだ。 「な、なんですか?」 「いや…なんか凪沙くんの話題を出した途端に君の顔が青くなったから生徒会長として見過ごせないなぁーって思って」 そう心配そうに言うが、顔は面白そうにニヤニヤしていた。 なんて言えばいいのか…いや、直接暴力を振るわれたわけじゃないから何も言えず口を閉ざす。 生徒会長は含みのある笑みを見せながら歩いて行った。 全てを見透かしたような彼がとても怖かった。 なんで、自分ばっかり…その思いでいっぱいだった。

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