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第20話※

※性描写ありです。 俺はドアにへばりつき身動きが取れなかった。 …この時、毎日通勤ラッシュに耐える社会人は凄いと感心していた。 電車が揺れるからよろけないように手すりに掴まり足を踏ん張る。 なんか尻がもぞもぞする感触がした。 満員だし、誰かのカバンかなにかが当たってるのだろうと気にしなかった。 それはだんだん大胆になっていった。 明らかに尻を撫でるその動きに全身がゾワッと鳥肌が立った。 (まさか、痴漢?…男の俺に?女と勘違いしてるのか?) 逃げようとするが、満員電車で身動きが取れない。 昔会った痴漢を思い出し、顔が青くなる。 ドアの窓に手をつくと、痴漢の手だろうか握られた。 ドアに押さえつけられるようにぴったりと密着する。 耳元で直接息遣いが聞こえた。 「…俺に黙ってこんなところに来るからこうなるんだよ、ももちゃん」 「っ!?」 ゾクッとするような美しい声に怖くて下を向いていた顔を上げてドアのガラス越しに後ろを見て目を見開いた。 そこにいたのはやはり凪沙だった。 凪沙は何でもないように涼しい顔をしていた。 正体がバレたのに手の動きは止める気がないようだ。 なんで此処にいるのかと考える前に痴漢を止めさせなくてはと窓に映る凪沙に向かって言う。 …直接凪沙の顔を見て言えない、凪沙が怖いから… 「や、やめて…」 「何を?」 「ひぅっ!!手…手っ…」 凪沙は分かっているのにとぼけて尻の間に指を滑らせた。 グリグリと押されて気持ち悪い変な感じになった。 凪沙を手を掴みたいが腕が下ろせない、凪沙が俺の背中に密着してるからだろう。 周りの目が気になり周りを見る。 まだ気付かれてない…まさか、堂々と痴漢しているなんて思わないだろう。 指を離しホッとしたのもつかの間、凪沙は笑い混じりの楽しげな声が聞こえた。 「あー、ももちゃんはこっちが良かったんだ…気付かなくてごめんね」 「だっ、だめっ」 大きい声を出すと気付かれちゃうから小声で言うが弱々しく頼りない声になった。 凪沙は俺のズボンのファスナーを開けた。 手を入れられ直接握られた。 他人に触られた事がないそこは自分の意思とは関係なく好き勝手動く手に反応し始めていた。 涙目になり必死に止めるように目で訴えるが熱っぽい瞳で見られた。 その瞳で見られると今まで感じた事がないぞくぞくとした変な気持ちになった。 「あまり煽るなよ、ももちゃんが二度と電車なんかに乗らないようにトラウマ植え付けてるだけなんだから」 なんだ?なんか恐ろしい事を言われた気がするが、小声だったし電車の音で掻き消えた。 俺に出来る事は早く凪沙が飽きるのを声を押し殺して待つだけ。 電車の揺れでさらに密着して俺のかたいものが押し付けられた。 …なんで男に触って興奮しているのか分からない。 凪沙はそういう人なのだろうか。 もう何も考えられない、頭が真っ白になる。 「…んっ!!?」 凪沙の手が離れてファスナーを上げられる。 足の感覚がなくなり、立ってられない俺の体を支える。 …その優しさでもうほっといてくれ。 下半身が気持ち悪い、ぽろぽろと涙を流す。 …凪沙に…こんな場所で…イかされてしまった。 どうして、なんで、そんなに嫌うの? 「これに懲りたら、もう電車は乗らないでね…今度は本物の痴漢が出るよ」 お前は本物の痴漢じゃないのか…問いたいがそんな元気もなく、ただ電車の揺れと凪沙に身を任せた。 いつの間にか後ろに凪沙はいなくて、ドアに寄りかかっていたら風太が俺を引っ張って電車を降りた。 …そうだ、これから遊びに行くんだ…こんな格好で… もしかしたら凪沙はこの事も想定内だったのだろうか。 俺が恥ずかしがって遊ぶのをやめると… 凪沙の思い通りになるのが嫌で、駅を出てこれから何処に行くか相談している風太と椿くんを見た。 ノープランだったらしく、今の俺にはありがたかった。 「俺、服見ていきたいな」 「んー服?そうだね、じゃあまず服屋行くか!オススメのところがあってさ!」 新しいズボンと下着を買いたくて言うと風太は賛成してくれてオススメの店を案内してくれた。 変に思われてなきゃいいけどとドキドキしながら風太達に着いていく。 歩く度に下着が張り付いて気持ち悪い。 他人からの刺激が初めてだったのもあるが、男に触られたら普通萎える筈なのに確かに興奮する自分がいた。 それに、痴漢で怖かったのに凪沙の顔を見たら一瞬ホッとした…どうして?あり得ない…凪沙が一番怖いはずなのに… 眉を寄せる俺に気付いた椿くんは首を傾げた。 「どうした?具合悪いのか?」 「…え、そんな事ないよ」 「……そうか」 「しっかし、意外だね…和音がオシャレさんなんて…椿のセンスは大阪のおばちゃんみたいでさー、この服だって椿の姉ちゃんに選んでもらっててさ」 「ぐっ、服なんて着られればなんだっていいんだよ」 俺も考えは椿くんと同じだが最初に服を見たいと言ったから勘違いされたようだ。 訂正するのも面倒でそのままにしといた、別に放置しても困る事ではないし… そんな事より早く着替えたい。 人気が多い店が並ぶ道にそれはあった。 クールな青色デザインのメンズショップに入った。 入って早々適当にズボンと下着を選びサイズを確認してレジに持っていく。 風太と椿くんは服を見ていた。 「じゃあちょっとそこの公衆トイレで着替えてくるから」 「早っ!もう買ったの!?」 「うん、じゃあちょっとここで待ってて」 風太と椿くんにそう言い、駅前の公衆トイレに駆け込むように向かった。 店が駅前近くで助かった。

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