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第23話

首を掴まれ少し力を込められた。 苦しくて離して欲しくて首を掴む手を両手で引き剥がそうとするがビクともしない。 …怖い、怖い…このまま殺されてしまうのか。 息がしたくて口を開けて必死に空気を吸おうとする。 ヒューヒューと空気が抜ける音がする。 ガリッと凪沙の手を引っ掻くが力を緩める気配はない。 「ももちゃんは俺のだって見せびらかしたのに、あの男…笑いやがって」 なんだ?何の話だ?分からないが凪沙がとても怒ってるのは分かる。 ギリギリと首が締まり、意識が遠のきそうに感じたところで手を離した。 よろけてむせて思いっきり息を吸い込む。 逃げようと一歩踏み出すと凪沙に後ろから抱きしめられた。 凪沙に捕まったままでろくな抵抗も出来ず凪沙にもたれるような格好になっていたらグッとシャツの襟を引っ張られて首を噛み付かれた。 じくじくと痛みが広がる。 「ひっ!!」 「…ももちゃんはおれのものだ、ももちゃんは」 ぶつぶつそう言い次の瞬間ピリッと小さな痛みが走りやっと解放された。 足に感覚がなく、フラフラと歩き壁にもたれる。 凪沙に噛まれた首がヒリヒリと痛い。 血が出たのかな、でも触るのが怖い。 今まで凪沙は何もしなかった…初めてだった。 電車のアレもそうだし、こういう直接的な暴力はされた事がなかった。 だから凪沙の変化に驚き恐怖した。 「それはももちゃんの首輪代わりだよ、消えたらまた付けてあげる…いつか本物をプレゼントするよ」 凪沙はそう言い微笑んで、俺の横を通りすぎて何処かに行った。 首輪…凪沙の意味が分からなかった。 そしてアパートの部屋に帰り、洗面所の鏡を見てようやく意味を理解した。 俺の首には真っ赤な輪のような締められた手の跡が残りその下にはアクセサリーのように歯形とキスマークが付いていた。 まるで俺を拘束するようなそれは、俺を苦しめていった。 やっと、出来た俺の居場所はそこじゃないと引っ張られるような気持ちになる。 明日、どうしようか…風太達には絶対に見せられない。 きっとまた見てるのだろう、凪沙の視線を逃れる事は出来ない。 ーーー 翌朝、登校したら教室で声かけてきた風太は驚いた顔をしていた。 冷や汗が出る…不自然に見えるだろうが、これしか思いつかず誤魔化せてればいいが… 無意識に首に触れる…そこには昨日凪沙に付けられた跡がある。 しばらくは消える事がないだろう…見るたび苦しめられる呪いの首輪。 風太がこれを見たら心配掛けてしまう。 ……いや、気持ち悪がられるかもしれない…だから絶対に見せられない。 「ど、どうしたんだ?それ…」 「今朝、寝違えてさ…ははっ」 首には白い包帯が巻かれていた。 なにかないかと部屋中探して一人暮らしする時に母親に持たされた救急箱を見つけて中の包帯で首を巻いた。 自分で巻くのは難しくて取れないか心配になる。 なんとかこれで誤魔化せるかな、でもずっと包帯してたら怪しまれるから次も考えないとな。 包帯でも心配掛けてしまった。 ごめん、風太…でも風太は関係ないから巻き込みたくないんだ。 「そう、なの?大丈夫?」 「うん…心配させてごめん」 風太に心配掛けて罪悪感で謝る。 とりあえず信じてくれたみたいで良かった。 ちらっと凪沙がいるところを見てゾクっと背筋が冷えた。 凪沙は周りが話しかけていて、適当に返事をしていて目線はこちらを向いていた。 その瞳は無で、怖くなりすぐに席に座る。 見られただけなのに首の痣が疼く。 風太に声を掛けられたが返事をする余裕がなくずっと頭を抱えていた。 ※北島光太郎視点 いつもの生徒会室、いつもの顔ぶれを眺めて生徒会室に入る。 「おはようございます、会長」 「はよー、かいちょー」 「おはようございます、お荷物お持ちしましょうか」 「いいよ、おはよう皆」 生徒会書記の子に断り、自分の席に座る。 これからの学園行事の予定表を眺める。 新入生歓迎会か、確か今年は部活動ごとにパフォーマンスをする事に決まっている。 生徒会は毎年劇を披露する事になっていた。 あまり演技は得意ではないがやらないと毎年楽しみにしてくれてる子達に悪いから仕方なくやる。 演舞なら得意なんだけど、今の子は退屈だろうな。 「会長、演劇部の方達が衣装が出来たとご報告がありましたので放課後見に行ってください」 「…あれ、着なきゃダメ?」 「演劇部の子達は張り切って作ったようですよ、会長の王子衣装」

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