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第24話

クスクス笑う副会長に苦笑いする。 あの衣装装飾品が多くてじゃらじゃらしてて動きづらいんだよなぁ… 裏方の奴等が羨ましいよ。 …村人Aが良かったな…今言っても仕方ないけど… 机に伏せる。 なんか今日はどうもやる気がない。 「会長、どうかしたんですか?今日…なんか疲れてますね」 「あー昨日アレだったみたいだね」 「第二日曜日、ですか」 生徒会は察して無言になる。 昨日彼と公園で話し終わった後、ある場所に向かった。 自分の家と同じくらいの大きさの屋敷、茶道の名家だから当然と言えば当然だろう。 手土産は食べたから手ぶらで向かう。 どうせ食べないんだったら食べた方がお菓子を作った人は嬉しいだろう。 チャイムを鳴らし玄関に現れたのは今年90歳の時子(ときこ)さん。 頭を下げると礼儀正しく返された。 その後ろには見たくもない顔がいた。 お面を貼り付けたような笑みに吐き気がしそうになりつつ完璧な笑みを浮かべた。 黒川(くろかわ)(さくら)、名家の跡取りのご令嬢であり婚約者。 時子さんに言われ、屋敷の中に入る。 和室に案内され二人っきりにされる。 密室になったように空気が息苦しくて、シャツの首元を緩めると桜が口を開いた。 「何、その格好…私に恥かかせたいの?」 「ははっ、この格好で是非婚約破棄されたら願ったり叶ったりなんだけどなぁ」 桜に睨まれるがヘラヘラと笑う。 婚約破棄するためにこの格好をしたのは本当、向こうから婚約破棄してくれたら嬉しいんだけど時子さんにはスルーされた、無駄な努力だったか。 桜は時子さんがいた時に見せた仮面姿を徐々に剥がしていた。 この女は昔から性格がとても悪い。 もらったプレゼントをその場で捨て、雨上がりの時水溜りに突き飛ばす…のはまだいいくらいだ。 少し気になっていた女の子に嘘の悪口を吹き込み暴力を振るったりする、ボールペンで手のひらを刺された事もあったっけ…その時桜は俺が自分でやったと嘘泣きして周りの大人達を丸め込んだ時にはゾッとした。 それが小学生の頃にされてどうやったら好きになれると思う? 政略結婚でお互い恋愛感情はないが、ずっと一緒にいたら殺される…周りに訴えても桜の信頼の方が上だろうから、だから婚約破棄をしたいんだ。 桜は家のために絶対に頷かないだろう。 「私は可哀想なアンタとしょうがなく結婚するの、ありがたいと思いなさい」 「ありがとうありがとう」 「何それ、バカにしてるの?」 「利口な子にしかバカにしてるって使わないよ」 桜は怒りを露わにして立ち上がる。 その時、タイミングよく時子さんがお茶を用意してくれた。 桜は茶道の跡取りだからお茶をたててくれるといい笑顔で言うから毒を盛られかねないから時子さんのお茶だけ飲む事にした。 毎月このやり取りを繰り返している、いい加減気が変になる。 時子さんがいなくなり、桜は再び座る。 またポロポロと笑顔の仮面が剥がれていく。 「今日は手土産ないの?」 「捨てる子には手土産はありません」 「っ!…ふん、いつも年寄りくさい手土産なんて持ってくるからよ」 手土産を選んだのはばあ様だ。 身内をバカにされて桜を睨む。 桜には反省の言葉はなく、自分が正しいという態度だった。 彼といた時間はとても楽しかった。 心穏やかになったのはいつぶりだろうか。 …嫌な奴に会った時こそ彼を思い出す。 秘密を共有した仲… 知ってた、彼が凪沙くんに痴漢されてた時…凪沙くんは俺に見せつけるようにしていた事を… 彼には見えなかったのかな?…恐怖だけで相手を支配なんて出来ない。 彼は凪沙くんに恐怖を与えられ続けている、会う度そうだから誰にでも分かる。 だから俺は優しくする…優しさに飢えてる彼は怖い凪沙くんより優しい俺に頼るだろう。 必死になる凪沙くんが面白くてつい笑ったら睨まれてしまった。 凪沙くんが何をしたのか自分の過ちに気付く日を待ち望み微笑む。 「なに笑ってんの?気持ち悪い」 「じゃあもう帰るよ、時子さんによろしくね」 そう言い桜の見送りを拒否して屋敷を後にした。 俺と婚約者の関係を知ってる小学校からの幼馴染みである生徒会三人はまるで自分の事のように落ち込む。 いい奴だから痛みが分かる、桜とは正反対。 桜も小学生の時同級生だから桜の性格も分かっていた。 でも名家のいざこざに首を突っ込み自分の家ごと消されたら大変だから俺があまり心配しないでと首を突っ込む事を拒絶した。 心配はしてくれるみたいでありがたいと思いながら明るくするために伏せてた顔を上げる。 「新入生歓迎会までもうすぐだし、練習でもしよっか!!灰原(はいばら)が姫役ね」 「えー、かいちょーそれギャグになりますよー」 生徒会室はいつもの明るさを取り戻し笑い声が廊下まで響いた。

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