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第25話

※視点なし 桃宮(いつき)、共学校の聖帝学園で何故か男漁りをしている少年。 本人はノンケを誘うのが楽しいらしい。 生徒に興味はなく教師ばかりを誘惑する。 それを中学生の時からしていて悪名高くなった。 樹は困らない、気持ちいい事が出来ればそれでいい。 そして入学式の時、担任教師を誘い空き教室で乱れていたらそこを麗しの生徒会長様に見つかった。 厄介だな…他の教師にチクって入学早々停学とかマジシャレにならないと冷や汗を流す。 しかし生徒会長様はニコッと笑い「君に興味がある」と言われ一瞬ドキッとした。 普通のノンケなら嫌悪感を隠しもしないのに彼にはそれを感じず、まさか彼は自分を… 「あ、違った…君のしてるところが見たい」 前言撤回、彼はとても変人だ。 一瞬自分が好きなんじゃないかと思ってしまった自分が恥ずかしい…これだから子供はと自分より年上なのにそう思った。 それから生徒会長様は変態趣味で樹と教師の絡みを隣の教室から聞き耳を立てるようになった。 なにが楽しいのか分からないが、誰かが声を聞いてると思うといつも以上に興奮して楽しんだ。 そんな変な日々が続いたある日、樹は出会った。 教室で今日の相手は誰にしようかと考えてる時に名も知らないクラスメイトが教室のドアの前から教室全体に響くように声を上げた。 「桃宮いるかー?」 そんな大声を出さなくても聞こえてると舌打ちしたい気持ちを抑えて立ち上がる。 生徒には全く興味がないからクラスメイトの名はろくに覚えていなかった…呼んだ彼の名も分からない。 今日のお誘いだろうか、行く手間が省けたとドアに近付いた。 ドア付近にいた生徒達は何やら嬉しそうに叫んでいた。 まるで芸能人みたいだ、こんなに生徒に人気の教師なんていただろうか。 そしてその姿を視界に写し一瞬周りの声や雑音が消えた。 「君が桃宮?」 やけにその声だけが美しく響いた。 一目見ただけで周りが明るく見える事なんて、今までなかった。 その瞳で見られただけで全てを見透かされ囚われてしまう。 美しいだけではない、妖艶で誰もがその肌に触れたいと思わせる魅力が彼にあった。 ボーっと美しい少年を見ていたら、興味が失せたように瞳を閉じた。 瞳に写らなくなり樹は寂しく思った。 「桃宮と名乗る子がどんな子か知りたかっただけだから、じゃあね」 行ってしまう、なんで呼んだのか分からないが少なくとも自分に興味があるのだろう。 この時ほど自分の顔に感謝した日はないだろう。 逃したくない、大人にしか興味なかったのに彼を知りたい…彼に知ってほしい。 これが、きっと一目惚れなのだろう。 気がついたら腕を掴み引き止めていた。 驚いて彼はこちらを見た…その琥珀色の美しい瞳に自分が映るだけで胸が高鳴った。 「ぼ、僕の名前知ってる?桃宮樹!」 「…下の名前は知らない」 感情がこもってない声だったが会話をした事で舞い上がってしまい気付いていなかった。 いつもは教師の首に腕を回しておねだりする。 でも、今の樹はまるで生娘のように顔を赤くして恥じらい彼の袖をキュッと握る。 樹の顔はそこらの女子よりとても可愛くてノンケの男でも誘われたら獣と化す。 今までがそうだった、そしてこれからも… 樹は全てに自信があった。 「その、君に一目惚れ…したみたい…だから僕と…ただの性欲処理でもいいからしてみない、結構僕の名器だって評判…」 最後まで言う前に手を振り下ろされた。 強く握っていたが床に叩きつけられる勢いがありすんなりと離れた。 驚いて彼を見ると、とても恐ろしい顔をして睨んでいた。 ゾッと恐怖を覚えた。 まるでゴミを払うように樹が触った腕を払っていた。 初めてだった、そんな反応をする人に会った事がない。 「……気持ち悪い」 さっきの声ではなくとても低い心の底から嫌悪している声だった。 彼はそのまま歩いて行ってしまい、もう引き止める事はしなかった。 周りは二人のやり取りを眺めていたが凪沙が拒絶して「そりゃあそうだよな、いくら可愛くても男だし」という声が聞こえて彼がいなくなった事で周りは興味がなくなりいつもの廊下に戻った。 最初は男だしと思うだろう、でも樹の魅力に魅入られた男はそんな事が関係なくなるほど夢中になるのを彼らは知らない。 …樹はソイツらには興味がないから一生知らなくていいけどと吐き捨てる。 樹は教室に戻ると樹を呼んだ生徒を探して声を掛けた。 「……ねぇ」 「えっ!?あぁ、桃宮か」 友人との話に夢中で気付かなかったのか驚いた顔で樹を見ていた。 話題は先ほどの美しい少年についてだった。 ちょうどいいと静かに微笑む。 まさか初めての会話がこんなものだとお互い今さっきまで思わなかっただろう。 でもきっとこれが最後の会話だろう。 樹は小鳥のように可愛らしい小さな口を開けた。 「さっきの人、誰?」 「さっき?…あー、知らないの?白川凪沙くん」 「知ってる知ってる!超イケメン高校生!彼女持ちじゃなかったらアタックしてたのにー!!」 「お前みたいなケバい女無理だろ!」 ギャルみたいな友人と楽しく話してるがそんなのどうでもいい。 もう用がなくなったから再び彼の事で盛り上がる群れから離れて教室を出た。 しばらく廊下を歩いていると、職員室から副担任が出てきた。 樹を見るなりいやらしい顔になり近付いてきた。 彼は確か一回だけ相手をした事があった。 30過ぎてまだ童貞でエッチも下手だからもうしたくはないと思っていつも避けていた。 「桃宮、話がある…今日の放課後生徒指導室に」 「今日は先約があるから無理でーす」 明るく言って通り過ぎると舌打ちが聞こえた。 今はもう誰ともそんな気分になれない。 そう、そうでなくっちゃ… 堕ちない男を堕とすのが楽しいんだ。 今日は他人の顔を見たくないから凪沙くんを妄想して自慰するかな。 ふふっ、絶対に逃さないから覚悟しててね凪沙くん。

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