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第二章・5
広いベッドに、啓は亜希をそっと横たえた。
ほとんど沈まない、マットレス。
「やはり、体重を増やさないと」
苦笑し、パジャマを用意する。
啓のパジャマは、亜希には大きすぎる。
「小さいより、ましだろう」
そして、亜希のシャツのボタンに指をかけた。
「ぅん?」
なぜだろう。
「妙に、ぞくぞくするな。背徳感か?」
婚約者のいる身でありながら、少年の服をベッドで脱がせている。
そんな気分の彼自身に、啓は自嘲気味の笑いを漏らした。
「こんなことだから、避けられるんだ」
解っている。
この結婚に、愛など存在しないことは。
「所詮、家同士の結婚だ。私は私で、好きにさせてもらうさ」
そう。
このまま、この少年を抱くことだってできる。
啓は、亜希の頬にそっと手のひらを当てた。
「う……」
わずかに漏れる、声。
震える睫毛が、扇情的だ。
だがしかし。
「いや。やはり君は、もう少し体重を増やして健康的にならなきゃな」
そして啓は、亜希に自分のパジャマを着せた。
「やはり、ぶかぶかだ」
小さく笑って、啓は亜希の隣に横たわった。
そして、その柔らかい髪をひと撫ですると、瞼を閉じた。
隣から聞こえる安らかな寝息が、心地よかった。
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