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第三章 アイスクリームは好きか?
電子音が、聞こえる。
その音に、亜希は目覚めた。
鳴っているのは、スマホのコール。
顧客から、電話で呼び出されることもある、亜希だ。
寝ぼけた頭で、自分のスマホが鳴っていると勘違いして、目を覚ました。
「え……、え?」
だが、亜希は自分の置かれている状況を把握できなかった。
心地よいベッドに、ぶかぶかのパジャマを着て、寝ているのだ。
そして、隣には啓がいた。
「ああ、解ってる。怒ってやしない」
スマホで話しているのは、啓だったのだ。
身じろいだ亜希に気づいたのか、啓は通話をしたまま彼の頭に手をやった。
淡い色の髪を撫でながら、会話を続けた。
「しかし、相手は誰だ? 友達?」
『ええ、そう。突然、一緒にお食事したい、って。困っちゃうよね』
「今度私との約束をキャンセルする時は、電話一本よこしてくれると嬉しい」
『うん、そうする。ごめんなさい』
相手の方から切れた通話に眉根を寄せて、啓もまた電話を終えた。
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