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第四章・4
「亜希くん。今のままでは、100年たっても医者にはなれないよ」
「そう、ですか?」
啓は、この医者の卵にすらなっていない子を、見た。
「まず、規則正しい生活を。食事も、ちゃんと摂るんだ」
「でも……」
「受験勉強に耐えられるだけの、基礎体力を付けるんだよ。話は、それからだ」
「でも……」
「予備校に通って、新しい知識を身につける。そして、受験に臨むんだ」
「でも……」
何を言っても、でも、としか言わない、亜希。
いや、はい、と言いたくても言えないのだ。
そこで、啓は身を乗り出した。
「私が、君の客になろう。向こう一年間、貸し切りの客だ」
「え!?」
「そうしてくれれば、衣食住はおろか、予備校の学費、受験料、入学金、大学の学費、全部私が賄う」
「そ、そんな」
願ってもない話だ。
亜希は、この提案に跳びつきたくなった。
しかし、ためらいもあった。
(なぜ、菱先生は、こんなに僕に親切なんだろう)
いや、もはや親切の範疇を越えている。
迷って目を泳がせる亜希に、啓は誰にも言ったことのない話を打ち明けた。
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