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第四章・5

「実は、私には婚約者がいてね。昨晩、ディナーの約束をすっぽかされた」 「あ。あの時の」 「彼も、オメガでね。旧家の御子息なんだ。家同士が決めた、政略結婚さ」 「何か、すごいです……」  ところが。 「ところが、その子が奔放で。社交界の連中と、ホストクラブで豪遊三昧」  はぁ、と啓は息をついた。  婚約、なのだから。  結婚するまでは、お互い自由のはず、と言うのが彼の言い分らしい。 「ホストで終わればよかったのだが、最近は特定の人間と付き合っているようなんだ」 「浮気、ですか!?」 「彼の持論では、浮気ではないよ。まだ、自由の身なんだから」  そこで、君の出番だ。  啓は、亜希を見つめた。

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