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第四章・7

 亜希が答えを出すのは、早かった。 (それに、菱先生は素敵な人だし)  婚約者を大人しくさせるための、偽りの愛人。  その肩書は亜希の胸をチクリと刺したが、迷っている暇は無かった。 「僕、先生のお世話になりたいです」 「良かった!」  では、と啓はにっこりと微笑んだ。 「これからは君のことを、亜希、と呼んでもいいか?」 「はい。菱先生」 「固いな。私のことは、啓さん、と呼んでくれ」 「け、啓さん……、ですか?」  いいね、と啓は椅子から立ち上がった。  そうと決まれば、引っ越しだ。 「亜希。今日から、私のマンションで寝泊まりしなさい」 「え!? あ、はい……。はい!」  亜希の前に、新しい道への扉が開いていた。

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