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第五章 婚約者

 啓のマンションに移り住んで、二週間ほどが過ぎた。  亜希は、少しずつ新しい生活に馴染んでいった。  啓は続けざまに、彼にいろいろなものを提供してくる。  まず、健康診断。  幸い亜希は、感染症や基礎疾患を持っていないことが解った。  次に、食事。  毎日三度の食卓を啓が受け持つことはできないので、栄養士が監修したデリバリーが運ばれてくるようになった。  そして、勉強。  プライベートルームには、人間工学に基づいて設計された、疲れにくいデスクや椅子が用意された。  予備校へも、通えるようになった。 「でも……」  亜希は一日を終え、ベッドに横になっている。  隣には、啓が。  彼は瞼を閉じて、眠ってしまった。 「どうして啓さんは……」  僕のことを、抱いてくれないんだろう。  亜希は、考えを巡らせた。

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