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第七章・4
数秒経っても、利実は何も言わない。
そこで啓は、こちらから声を掛けた。
「もしもし?」
『……抱いた?』
「ご想像に、お任せする」
『じゃあやっぱりまだ、そこまでの関係じゃないんだ』
利実は、愉快そうに笑った。
『あなたに、そんな度胸は無いよね。それに、亜希くんは何だかパッとしないし』
「亜希を悪く言うのは、よしてくれ」
『何、それ。かばうの? あの子を』
「切るぞ。もう、寝る」
利実はまだ何か騒いでいたが、啓はそのまま通話を切った。
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