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第七章・6

 浅い眠りから覚めると、隣に亜希の姿がない。 「どこへ行ったんだ、亜希」  慌ててベッドから降り、リビングへ出ると、キッチンから良い香りが漂ってきた。 「亜希?」 「あ、おはようございます。啓さん」  そこでようやく、啓はぱっちりと覚醒した。  夢と現実が、切り離された。 「もうすぐ、朝食の準備ができますから」 「うん。ありがとう」  シンクの前に立つ亜希を、啓は背後から抱きしめた。 「け、啓さん?」 「昨夜は、悦かったよ。体調はどうだ? 辛くは無いか?」 「……ありがとうございます。大丈夫です」  本当を言えば、少々体が重いし、後膣が疼く。  そこで気を紛らわすために、キッチンに立っていた亜希だった。  だが、そんな自分をいたわってくれる啓の優しさが、嬉しい。  幸せが、胸いっぱいに満ちていく。  コックをひねって水を止め、亜希は啓に向き直った。 「啓さんは昨夜、僕の体中に溜まった澱をきれいに清めてくれました」 「……キスしても、いいか?」  返事になっていない啓の言葉に微笑みながら、亜希は彼からのキスに応えた。  昨日までとは違う朝を、迎えた。

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