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第八章・2

 二日後。  啓は、やはり自分の誕生日には帰宅しなかった。  それでも亜希は、精いっぱいのお祝いの準備をして待っていた。  テーブルには、花を。  とっておきの、食器を。  そして、良い肉を大切にフリッジに収めて待っていた。  彼が帰って来てから、ステーキを焼くつもりでいた。  勉強の合間に、亜希は気分転換に料理をするようになっていたのだ。  肉の焼き方も、ずいぶん上達した。  今日の、このハレの日に、腕前を発揮しようと待っていた。  待って、待って、待って。  待ちくたびれて、ソファでうたた寝をしていると、ふわりと空気が動く気配がした。 「……啓さん?」  姿勢を整えたが、そこに啓はいない。  代わりに立っていたのは、あの婚約者・利実だった。 「殊勝だね。帰ってこない人のために、誕生祝いの準備をしてるなんて」 「利実さん」  すいと滑るように動き、利実は亜希の隣に掛けた。

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