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第八章・4
「で、どうなの? 医大生に、なれそう?」
「先日の模試で、志望校が初めてA判定になりました」
「へぇ。どこの大学?」
「○○大学です」
その学校名を聞き、利実は鼻で笑った。
「僕の卒業した大学より、偏差値が低いね」
ちなみに啓さんはね、と利実は国内で最も難関とされている大学名を口にした。
「啓さん、すごいんですね……」
「まあ、ね。僕の婚約者なら、それくらいは、ね」
「でも、利実さん。ちゃんと啓さんの出身校、覚えてるんですね」
「え」
そこで利実は、初めて口ごもった。
「べ、別に? お見合い写真のプロフィールに、載ってただけだから」
啓への想いは、ごまかした利実だ。
いや、自分自身にも気づかないまま、ごまかしている。
素直になれない性格が災いし、高慢な印象を振りまいている、利実だった。
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