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第八章・6

「ただいま」 「啓さん!?」  利実が去って間もなく、啓の声がした。  今夜は、帰らないはずなのに。 「少しだけ、他の先生にお願いして、代わってもらった」 「いいんですか?」 「亜希が、私の誕生日にどんなサプライズを用意しているかが、気になってね」 「啓さん……」  亜希の胸は、弾んだ。  解ってくれてたんだ、啓さん! 「ステーキを、焼きます。掛けてください」 「それは楽しみだ」 「あの。その前に」 「ぅん?」 「お誕生日、おめでとうございます」 「ありがとう。いい誕生日だ」  啓は、亜希をそっと抱き寄せ、軽く唇を合わせた。  利実の残した意地悪な言葉が、見る間に溶けて無くなっていく。  二人きりの、誕生会。  だがそれは、とても素敵な時間だった。

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