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第十一章・3

 亜希は、フェラチオを知っていた。  客にねだられ、その性器を口にしていた。  ていねいに、舐めて。  舌先で、弾いて。  手で、しごいて。  そんな風に注文を受けながら施していたので、どこをいじれば気持ちが悦いのかは承知している。  だが今、亜希はどんな客にもやったことがないようなことをしていた。  心を込めて。  ただ、一心に。  啓を慰めたいその一途な気持ちで、愛撫していた。  唾液で絡めて、滑らせる。  緩急をつけて、吸う。  喉奥まで送り込んで、抜く。  懸命な愛撫に、亜希が気付かないうちに啓の意識が呼び覚まされていった。

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