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第十一章・6
啓は、無心だった。
ただひたすら亜希を求め、その体を愛した。
「あ、あぁ、あ! 啓さんッ!」
「亜希……」
彼の温かな体に自分を埋め込んでいると、俗事のささいな悪心など消えていく。
もう、利実がしでかした悪趣味な悪戯も、忘れていた。
一気に駆け昇り、精を吐く。
スキンを突き破る勢いで、強く長く注いだ。
「あぁ、あぁああ!」
のけぞる亜希の体を支えて、ぴったりと腰を密着させると、彼の震えが伝わってきた。
荒い息を、汗を。
その鼓動と体温を、啓はしっかりと受け取った。
「啓、さ……、ん……」
亜希がうわごとのように唱えるのは、愛しい人の名前。
はあはあと呼吸を整えながら、熱い余韻に浸りながら、唱えた。
「好きです。啓さん……」
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